反社会的ユメノクニ。| Ryosuke.Y (ページ29)

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涼介「それだけのことで会社を辞めろって
……言われたの？」

「ううんさすがにそこまでは。でも…」

彼の目が強い憎悪の色に変わったのは、
わたしがそのことをきっかけに受けた酷い仕
打ちを話した直後だった。

涼介「っ…、何だよ……それ…」

＊＊＊

『Aくん、ちょっと…』

社員旅行から数日後、
程なくして受けたボスからの呼び出しはあま
りに理不尽なものだった。

"このまま仕事を続けたいのなら…"

利己的で傲慢なボスらしいカラダの要求。
当然の如く首を振ったわたしに、ボスは直ぐ
さまわたしから仕事を奪った。

ワンマン企業において、会社のトップに見放
されることはクビを切られたも同然。
オフィスで居場所を失くしたわたしが、日中
を公園で過ごすようになったのはこの数日後
だった。

無断欠勤を続ける日々
携帯が鳴ろうがメールが来ようが、職場から
の呼びかけに応じることはなかった。

＊＊＊

殺し屋だった蝉が涼介として孤立を脱し、
社会に適合したタイミングで…

宿主を失ったソレは、
彼のそばにいた自分に取り憑いた。

＊＊＊

涼介「我慢する必要なんてない。
そんなクズ人間の集まる会社なんてさっさと
辞めちまえよ！」

事あるごとに自分を『クズ』呼ばわりしてき
た彼が他人に向けて言い放ったのは初めてだった。

"いくらでも働き口は見つかる"
"生活のための金はオレが何とかする"

自暴自棄になりかけた思考が頬に添えられた
手の温もりに……救われた気がした。

「………涼介」

わたしが彼を励まし勇気づけたことは幾度と
なくあったけれどその逆は

この時が初めてだった。

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