光忠の半身 ページ6
◇
本丸に顕現している中だと、僕が最古だけれど、Aが来たらそれが少し揺らぐかもしれない。
光忠の中でも、早めに生まれた僕とAは、刃生をほとんど一緒に過ごしてきた。
鎌倉で芽吹いた時。人も都も焼け落ちた応仁の乱で共に身を寄せあった時。経緯は違ったけれど、信長公の元でたくさんの光忠と過ごした時。
焼けて記憶は朧気だけど、過ごしてきた時の多さは、僕にきちんとAの記憶を残してくれた。
僕が見てきた中で一番きれいな刀は君だよ、A
美しさだけじゃなくて、君は僕を何度も守ってくれた。
僕が傷を負う度に、君は何度も何度も抱きしめてくれた。
君の温もりが暖かくて、心地よくて、ひび割れた心が癒されていくのを感じた。
君の記憶を少しでも失ってしまったことが辛い。
僕の中の君が薄れてしまうようで。
でも、きっと君は笑うのだろう。
また作っていけばいい、そう言って。
傷なら僕が負う。
君は僕の半身。
ただそばにいて。
＊
「あれは、ッ………！」
敵を薙ぎ払い、見えたのは禍々しい結界。
その中に一人の刀剣男士がうずくまっているのが見える。
「あそこから力を吸い取っているのですな」
「…」
「実休殿？」
君の美しい姿が台無しだ。
濡羽色の髪も、僕と揃いの装束も、全てがぼろぼろで切り裂かれている。
僕と君の紫色の瞳には光がなく、今にも折れてしまいそうな君がそこにいた。
この気持ちはなんなんだろう。
あの日の焔のように、じりじりとこの身を焦がしていく。
ああ、これが……怒りか。
唸り声をあげる巨体の影。
Aを傷つけたのはお前？
「ふむ、続々と出てきましたな…。実休殿、いけますか？」
「まかせて。…一期くん、一番強い敵の首は僕が貰う」
鯉口を切る。
「…ええ。兄弟を傷つけられる気持ちは痛いほどわかります。…必ず打ち倒しましょう」
「うん。」
もう、誰にも触れさせない。
◇
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作者名：みといそ | 作成日時：2024年2月6日 0時
