薔薇 ページ18
◇
数日が経ち、Aは驚異のペースで身体を治していった。
それに伴い、Aを歓迎する宴が開催されることとなり、A光忠に由縁がある刀たちはその報せに顔を綻ばせた。
そんなある日、Aは福島が手入れをしている裏庭に招待され、ゆっくりした時間を過ごしていた。
『これは見事な薔薇だな』
「それは主が取り寄せてくれた薔薇でね、西洋のお姫様を想像して造られたんだと」
『なるほど。確かに気品を感じるな』
「Aは、その花が気に入ったかい？」
時折福島の解説を聞きながら裏庭を見て回るA。
『気に入ったというか、ここにある花は福島が丁寧に手入れしているのを感じられて、とてもいい』
「ありがとう。楽しんでもらえているのなら嬉しいよ。Aならこの庭にいつ入ってもいいし、気に入った花があったら摘んで持って帰ってもいいよ」
福島の言葉にAはお礼を言うと、ひとつの花の前で足を止めた。
『この花は？』
「ああ、なかなかその花は芽吹かなくてね。肥料を変えたり、場所を変えたり、色々工夫はしてるんだけどね」
Aの目の前にあったのは頼りなく生えている花。
「でもいつか咲かせてみせるよ。」
ねぇ、A、花言葉って知ってる？
福島の問いにAは首を振った。
「花には花言葉といって、一輪一輪意味があったりするんだ。」
「この花はルピナス。花言葉は…＿＿＿」
“幸せ” “あなたはわたしの安らぎ”
「これを機に、Aも花が好きになるといいな。｣
『でも、すこし妬けてしまうな』
福島は振り向いた。
視線の先にいるAは、花を愛でていて、福島が振り向いたことには気づいていなかった。
『君から花を贈られた人が羨ましい』
その言葉に堪らず福島は言う。
「Aにも贈るに決まってるだろう。Aに贈りたい花はまだ育っていないんだ」
『そうなのか。なんて言う花なんだ？』
「薔薇だよ、真っ赤な薔薇がいいかなって」
「十一本の薔薇を君に贈りたい」
『そんなにあったら枯らさないようにしないとな』
「枯らすまえに俺に教えてね？」
『もちろんだ』
その後も花の話に盛り上がったが、本数にも意味があることにAが気づくのはずっと先の事だった。
十一本の花言葉は “最愛”
◇
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作者名：みといそ | 作成日時：2024年2月6日 0時
