目覚め ページ14
◇
たくさんの刀剣が集まるなかには、無論、なかなか目を覚まさない兄弟を心配そうに見つめる三振りがあった。
眠るその姿は美術品のようだ。
腰まである夜空色の髪、整った目鼻立ち。白いシャツに紫色のネクタイ、鎧が組み込まれたジャケットは美術品で収まらない斬れ味の鋭さを表している。
運び込まれた時と違って、綺麗に治癒されたその姿からは、天下人を虜にした美しさがありありと感じられた。
誰かが見惚れてため息をつく。
そのとき、髪と同じ色のまつ毛がぴくりと動いた。
『こ、こは、………ッぐ、…！』
「A！」「兄さん！」
起き上がろうとしてよろめいたAをすかさず燭台切が支える。
髪と同じ夜空色の瞳が、不安そうに瞬く。星空のようなその瞳は、光を反射してちかちかと光った。
「無理はよくない。君は歴史修正主義者に襲われて、瀕死の重体だったんだ。」
『！ 敵は、どうなった…！？』
「安心してくれ。敵は全て討ち果たした。もう、元の歴史の流れに戻ったはずだ。」
主はA光忠に、どんな状況だったのか、と尋ねた。
Aはぽつりぽつりと状況を語った。
『異形の者はいきなり現れた。そして、特殊な術で私を人間にさせると、結界に閉じ込め、力を根こそぎ奪っていった。…戦った経験が少ない私には、彼らを倒すことが出来ず、彼らの思うがままにされてしまった…。』
『兄弟たちが来なければ、私はあのまま力を吸われて朽ち果てていただろう。心から感謝を』
Aは頭を下げた。
審神者は感謝を受け取ると、Aの体の調子を尋ねた。
「体はどうだ？ 異常はないか？」
『ああ、傷は全て消えている。しかし、あの時私は存在の全てを使い果たしたはずだ…。なのに、なぜ……』
「僕らの力を分け与えた。」
実休がそう答えると、Aは目を丸くした。
「僕たち兄弟の力を三分の一ずつ、君に流し入れたんだ。」
『分け与えたって、そんなことをして、兄弟は…？！』
「兄さんを助けられるならどうってことないよ」
燭台切の声にAは燭台切をその大きな瞳に映した。
福島と実休も続ける。
「燭台切の言う通りだ。後悔はない。」
「君を失うよりかマシだ」
Aは震える声で言った。
『……もう二度と会えないと思っていたから、夢みたいだ』
「夢にしないで」
『そうだな。兄弟が生かしてくれた…』
Aは微笑んだ。
『ありがとう…』
その瞳からぽたり、と熱い雫が零れた。
◇
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 181人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：みといそ | 作成日時：2024年2月6日 0時
