治療 ページ11
◇
本丸へ帰還して間もなく手入れ部屋へと運ばれたA光忠。
審神者はその美しさに驚く間もなく、治療を開始した。
手入れ部屋を後にした近侍のへし切長谷部は、戦装束から着替えもせずに手入れ部屋の前で見守っていた三人に様子を告げる。
「今主が治療している。肉体の損傷も、魂の損傷も激しく、手入れには時間が要るとのことだ。暫し待て」
三人は頷いた。長谷部が湯浴みや応急処置を提案したが、三人はそこを動こうとしなかった。
ただただ、じっと、主が手入れ部屋から出てくるのを待っていた。
半日が過ぎ、よれよれとした姿で手入れ部屋から出てきた主に、三人は駆け寄る。
主は半日も自分を待っていた三人に驚くと同時に、話すことがある、と三人を自分の部屋へ招いた。
＊
「端的に言う。A光忠の傷は治ったものの、魂の損傷が酷く、このまま手入れを続けても、A光忠が目覚める日は来ない」
審神者から告げられた言葉に、三人はそれぞれの反応を見せた。
「そんな、……、兄さん……」
燭台切は言葉を失い、呆然とした。
「もっと早く、助けられていたら……ッ」
福島は唇を強く噛み、拳を握りしめた。
「………」
実休は、何も言わず、主を見つめていた。
「なにかできなかったの…っ！ 兄さんを失うなんて、僕は、耐えられない、ッ」
「燭台切、落ち着いて。治してくれた主に恩義はあれど、非はない…。」
「なんで、実休さんは落ち着いていられるの！ せっかくまた会えたのに、目を覚まさないなんて、…。あの言葉が最期だなんて、僕は、僕は……！」
そのあとの言葉を発することが出来ず、震える燭台切の肩を福島が優しく抱く。
実休は何も言わない。しかし、伏せるその瞳からは、燭台切の言葉に思うところがあることを感じられる。
「方法は一つだけある」
審神者の言葉に三人は顔を上げた。
◇
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作者名：みといそ | 作成日時：2024年2月6日 0時
