異常 ページ2
◇
出陣に皆が沸き立った夜、実休光忠は酷い頭痛と動悸で目を覚ました。
「ッ………これは、なんだっ、……」
大事な戦を控えているというのに、思い通りにならない身体に舌打ちをする。
あまりの痛さに頭を抱えながら薬草のある医務室に向かおうとすると、二つの影がゆらりと月に照らされた。
「実休さん！ ……もしかしてあなたも …ッうう、」
「燭台切、しっかりしろ！ ……まいったな、俺もなんだよ。……ッ、なんだこの痛み」
影の正体は兄弟刀である燭台切と福島。
二人とも自分と同じ症状に苦しんでいるらしく、顔色は悪く足どりもおぼつかない。
三人で支え合いながら、医務室へ向かうが、その道中、痛む頭で実休はぐるぐると考えた。
これは偶然なのか、それとも必然……？
見回しても医務室に向かう人は自分たち三人だけで、光忠の刀剣だけにこの痛みがもたらされる状況は些か不自然だ。
医務室につき、実休は手早く薬草を煎じると、二人に飲ませ、自分も苦味を気にせず一気に呷った。
「実休兄さんありがとう。しかし参ったな、戦を前に体調不良など」
「原因に心当たりはある？」
「戦があるから、誰も酒を飲んでないし、無理なんて禁物にしてきたはずだ」
「もしかして、敵の策略…？」
「でもさ、不自然だよね。狙うなら敵を屠る主力部隊にした方がいいはずなのに、しかも、僕たち三人…」
話している間にも全く収まる気配のない頭痛と、ばくばくと打ち続ける鼓動に胸を抑える。
「ぐあ、ッ………」
突然、福島が倒れ込む。
「福島兄さん、大丈夫……ウッ、なんだこれは、ッ」
「力が、入らない…」
「力が、奪われている……？」
そう実休が呟いたところで、医務室の襖を勢いよく開いた。
入ってきたのは薬研藤四郎だった。
「光忠の刀剣が医務室に向かった、と聞いてな。大丈夫か！」
「すまない、薬草を飲ませたんだけど、全く効かないみたい…。それから、なぜだか何者かに力が吸われている……」
頽れる三人。
間もなく審神者や他の刀剣が走って駆け込んできて、現場は騒然となった。
◇
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 181人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：みといそ | 作成日時：2024年2月6日 0時
