て _ III ページ3
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中島とAが出逢った日の夜、Aは考え事をしていた。
「そろそろかなぁ」
Aは中島に声を掛ける前から凡てを知っていた。
中島が異能力者である事、
中島が施設の出だという事、
中島が_______。
川の畔、月を隠していた雲が風に乗り消えていく。
二人を照らすのは月明かりだけ。
不意にAの隣、寝ていた筈の中島から獣の吠える声がする。
「今回のノルマは大通りに出さない事」
Aは呟き拳を握った。
「グオオオオオオオ」
中島、否、
「うぉお、何か前よりも強くなった?」
暢気に質問をするが返ってくるのは虎の吠える声。
バシャン
Aは河川敷だけではスペースが狭いと感じたのか川の中に行く。
川の深さは約30センチメートル、川幅は約7メートル。
異能力___『他言無用』
「月下獣!」
Aがそう叫ぶと白虎はみるみる人間の姿に戻っていった。
中島は気絶しているのか受け身が取れず、そのまま川の中に顔面を突っ込んだ。
ブクブク、と息の泡が上がる。
「…世話がやける奴だな、白髪君」
Aは水中に顔面を浸けている中島の両脇に腕を通し、河川敷まで運んでいく。
中島は特に目立った外傷はなく、すやすやと気持ちよさそうに寝ている。
「飴玉の代償は高いからな」
Aは中島の頭を撫でた。
照らした月は雲に隠れている。
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作者名:遠藤氏 | 作成日時:2020年4月18日 14時