バニラドロップ ２

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「でも、横尾さんは迷惑だよね。
いつも１人旅なんでしょ？」

「俺は別にいいけどさー。
Aちゃん、気が合うし、楽だし。
ただ…。」

「ただ、何？」

「ニカが、めんどくさいから。」

って、横尾さんは苦笑い。

そっか、私が地元に帰るのさえ嫌がってたのに、横尾さんと旅行に行くなんて言ったら…。

確かに、想像するだけでもめんどくさそうだよね。

夜にレストランで横尾さんと飲むのさえ、禁止されてるのに。







３０分も経たないうちに、高嗣はずぶ濡れの合羽姿で帰ってくる。

廊下と教室に、ぽたぽたと水滴を落としながら。

「もー、入り口で脱いできなよ。」

そんなことを言いながら、脱ぐのを手伝ってあげてたら、それだけで高嗣は満足げな顔をする。

「…だって、横尾さんとA２人きりで残しとくの心配だし。」

とかって、小声で耳打ちしてくる。

こんな状態だから、横尾さんと旅行に行きたいなんて、とても言えないよね。







深夜を過ぎる頃、台風はこの辺りに上陸したらしく、ものすごい暴風雨が教室の窓ガラスに打ち付けられる。

教室の明かりを消して、みっくんが持参してきたランタンの明かりだけで、宴会は続く。

高嗣は疲れちゃったのか、そのうち、

「ちょっとだけ横になる。」

とか言いながら、速攻で寝ちゃうし。

その寝顔が子供の頃と全然変わんなくて、可愛くて仕方ない。

時計の針はもう深夜１時を指した頃、

「俺らも少し寝とく？」

って、みっくんが横尾さんを促して、

「俺らはあっちの教室で寝るから。」

とかって、いきなりエアーベッドを運び始める。

「え？みんなでここで寝ないの？」

「ここで寝たらニカがうるさいし、せっかくだし２人きりで寝れば？
あ、隣の教室にいるから、変なことはしないでね。」

そう言い残して、２人は隣の教室へ移動して行った。








残されたのは一台のエアーベッドと、子供みたいな寝顔で就寝中の高嗣だけ。

高嗣の寝顔の写真が撮りたくて、スマホでフラッシュをたいてたら、

眩しかったのか、高嗣が目を覚まして、

「…何？みんなは？」

って、目をこすりながら起きてきた。

「隣の教室で寝るって。」

そう言った途端に、急に嬉しそうな顔をして、そのまま私を抱き寄せてくる。

「やっと２人きりになれたー。」

って、本当に嬉しそうな声で。

狭いエアーベッドの上に隣り合わせで座ってたら、

「もう寝る？」

って、高嗣が小声で囁いてきた。

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