バニラドロップ ２

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そういえば昔、親から聞いたことがある。

この島には、島の人間だけでひっそりやらなければならない祭があって。

祭の３日間だけは、島の人以外は島に入れないって。

「Aは島の出身者の娘だから、参加できるんじゃないの？」

「でも島に住んでたわけじゃないから、無理なんじゃない？」

「じゃあ、その間、Aは島から出ないといけないわけ？」

「まあ…、そうなるよね。」

みっくんのその言葉を最後に、しばらく沈黙が続く。







「雪がさー、出て行ったのも、祭の時だったし。」

雪って誰だろ。

もしかして、前に言ってたみっくんの彼女かな。

「その間、里帰りさせてたら、それきり帰って来なかったから。」

「だから、Aもそうなるかもって？」

「そうならないように、ちゃんと考えておいたら？」

みっくんのその言葉に、高嗣は黙り込んでしまう。

ちゃんと考えておくって何を？

「ちょっと横尾さん見てくるわ。」

って、みっくんが教室を出て行く気配がして、

その後、高嗣が深いため息をついたのが聞こえてきた。






背中を向けて寝てる私の髪を撫でながら、また溜息。

たかが３日間離れるだけじゃん。

そんなに溜息つくようなこと？

ゆっくりと瞼を開いたら、高嗣とすぐに目が合ってしまう。

寝顔、ずっと見られてたんだ。

…恥ずいんですけど。

「おはよ。」

って、くしゃっと笑うと、また私の髪を撫でる。

「A、飲み過ぎだって。」

そう言われながら、ゆっくりと体を起こして、高嗣の正面に座り直した。







「さっき、みつと話してたんだけど。
体育館のお年寄り達が、俺とAの様子見て来いってうるさいから、みつと横尾さんで邪魔しに来たんだって。」

そう言って高嗣は、子供みたいに笑うけど。

さっきの話、蒸し返していいのかな。

気になって仕方ないんだけど。

「高嗣、祭って何？」

そう聞いたら、高嗣は目を丸くして、

「A、聞いてたの？」

って驚いてたけど、観念したように話してくれた。







「Aは祭には参加できないみたいなんだけど、その間どうする？」

「わかんない。」

「隣の島にホテルでも取る？
３泊して、ちょっとゆっくりしてきたら？」

「家に帰ろうかな…。」

そう言った途端に、

「３日間だし、わざわざ帰らなくてよくない？」

って、すぐに却下してくるのが面白くて、つい笑ってしまった。

もしかして、私がもう帰って来ないかも、とか思ってる？

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