バニラドロップ ２

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「それはだめ。」

って私は、速攻却下する。

「何で？」

「まだだめ。」

「じゃあ、いつならAのこと触っていいわけ？」

「…いつか。」

だから、展開が早いんだって。

最近の高嗣、グイグイどころか、けっこうがっついてきてるよね。

勝手に高嗣は奥手だと思い込んでたから、いきなりの路線変更に戸惑うんだって。







このままでは高嗣に触り放題触られてしまいそうだから、すぐに起き上がって、縁側から庭に降りる。

バーベキューコンロを片づけてたら、いつの間にか高嗣も降りて来て手伝ってくれるけど。

夜になってから、風が少しずつ強くなってきて、放置してた紙皿を飛ばしてしまう。

「なんか、風強くなってきたね。」

「あさって頃、台風が来るんだって。」

「そうなんだ。」

「知らないの？
今度もかなり大型の台風らしいよ。」

最近テレビもつけてなかったし、スマホでネットニュースを見ることもなかったから、全然知らなかった。







「台風になったら、高嗣の仕事はどうなるの？」

「台風の前後はまあ、無理だよね。
波も強くなるから、流されたら困るし。
台風の後は水が濁ってるから、２、３日は潜れないし。」

「じゃあ暇になるの？」

そう聞いた私の言葉に、高嗣は急に笑顔になる。

「何？俺が暇だとうれしい？」

「…別に。」

高嗣はいつもストレートに言葉をぶつけてくるから、

素直じゃない私は、「うん」とか「うれしい」なんて可愛い返事ができないんだ。

「俺はうれしいけどね。」

って、そのまま背中からふわっと抱きしめられた。

庭の真ん中で。







「まだ片付け終わってないよ。」

「…ん、ちょっとだけ。」

って、甘えるような声で。

だけど急に視線を感じて振り返ったら、生け垣の向こうの道を近所のおじいちゃんが歩いてるところで、

思いっきり目が合ってしまう。

慌てて離れたら、

気まずそうに、おじいちゃんは行ってしまった。

だからこの島は嫌なんだって。

明日にはきっと、今日の出来事が島中の噂になってるはず。

きっと、尾ひれがついて大袈裟に。








バーベキューコンロを片づけたら、高嗣は、

「じゃあ、帰るわ。」

って、私に手を振る。

私も庭から手を振るけど、何度も振り返って、最後にはまた引き返してきちゃうし。

「おやすみのキスするの忘れてた。」

って、掠めるだけのキスをして、自分からしてきたくせに恥ずかしそうな顔をして、今度はちゃんと家に帰って行った。

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