母の病気 ページ1
「ここが、おじいちゃんとおばあちゃんの家・・・」
広大な自然の中、僕は古民家を前に立ち尽くした。
僕の名前は白木 侑。高校一年生だ。
圧倒的な凄みがある祖父母の家にたじろぐ。
どこまでも続きそうな自然の緑。
花が咲き乱れて美しい庭。
思わず見入ってしまうほど年季の入った古民家。
僕、今日からここに住むんだ…
遡ること三日。
母が病気で入院した。
突然、病院から学校に電話がかかってきたらしく、それを聞いた僕は慌てて病院に向かった。
僕に父親はいない。シングルマザーの家庭で育ってきたぼくにとって、母はかけがえのない存在だった。
「母さん！」
病室に飛び込み、横たわる母に抱きついた。
お医者さんから命に別状はないと説明を受け、母に
「心配しないで。しばらくおばあちゃんに面倒をみてもらってね。」
と言われたが、不安と心配はぬぐえなかった。
しばらくして、家に帰り、味気ない夜ご飯を食べた。
僕はしばらく田舎のおばあちゃんの家で過ごすことになるらしい。
ついさっき、おじいちゃんから迎えに来るから荷物をまとめて欲しいと連絡が入った。
学校は転校扱いになるそうだ。皆とお別れした。また戻ってくると思うけど・・・
母さん、独りで寂しいだろうな・・・と心配しつつも、出発の日になる。
駅に着いたよ、とおじいちゃんが連絡してくれた。
せめて母さんに毎日電話しようと思い、家を出た。
おじいちゃんと遠い田舎まで飛行機や電車に乗って家まで向かう。
電車からバスに乗り換えて、バス停からは歩いて山に登っていく。もうへとへとだ。
しかし、やっとの思いで祖父母の家に着いたとき、カーブを曲がって家を見て、疲れが吹き飛んだ。
その景色に目を見開く。
そして今に至るわけだ。
「？」
あれ、なんだろう、視線を感じる。
『・・・・・。』
動物がいっぱいいるからか！
どこからか視線を感じたが、祖父母の家の凄さに飲み込まれてすぐに忘れた。
これからの生活に少し、期待と希望を抱いたのだった。
とある廃墟。
戦時中の写真が沢山、無造作に置かれている。
その中、無表情で写る兵士にしては髪の長い細身の青年の写真が少し動いた。
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作者名：いしみつ | 作成日時：2023年1月19日 17時
