38話 ページ38
※遠回しな性的表現があります
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今夜は随分と冷え込んでいる。
それなのに私は、見知らぬ部屋の冷たい床の上で横になっていた。
かじかんだ手に力を入れて上半身を起こすと、出来たての痣だらけの身体を隠す衣服を何も身につけていないことに気がついた。
ボーッとそれを見つめていると、頭が覚醒してきて徐々に記憶が思い出されてゆく。
「なぁ、あの村の奴らの言う通り連れて来たはいいけどよ……このまま殺しちまうのは勿体なくないか?随分いい女だと思うだろ?」
「あぁ、ちょっと遊んでやるか。痛くされたくなきゃあ抵抗すんなよ?」
まだ悪い夢を見ていたような感覚だが、投げ捨てられた自分の服と、抵抗する力も無くなるほど痛めつけられた身体。そして傍のベッドでいびきをかく二人の男を見て、あの地獄は現実の事だったのだと認識せざるをえなかった。
さてこれからどうしようか。
痛む身体も起こったことも、自分のものでない気がして、どこか他人事の様に考えてしまう。
とりあえず寒いから服を着て、起こさないように静かに外へ出た。
今は何時だろう。ここはどこだろう。
そもそも、どうしてこうなったんだっけ。
冷たい風が吹き付け一つくしゃみが出た。
子どもたちは風邪をひいていないかしら。
早く村に、教会に戻らないと。
知らない町はシンと静まりかえっている。タイルの上をおぼつかない足取りで歩いた。帰り道は分からない。
「あの女がやったに違いない!!あの占い師だってアイツが追い出したんだ!!」
焼け落ちた建物を前に膝をつく自分に落とされた言葉。
ああ、そうだった。あれが夢じゃなければ、私が村を追い出される前に………
「教会が、燃やされた」
「ッA!起きていたのかい?」
ベッドで眠るAの傍で相棒の羽を繕っていた時、彼女が突然声を発した。
さっきまで閉じていた瞳は天井を見つめている。
「……良かった、本当に心配して」
「子どもたちの居場所が無くなってしまった……!!」
まだ痛むはずの身体を無理に起こし、悲痛な叫びと共に布団にはポタポタと染みが出来ていった。
ここへ来てから彼女は、僕の前で一度も泣いていなかった。
いいや、今も彼女の目に僕なんかは映っていないのだ。
「A。僕は、イライ・クラークはここにいるよ」
しゃくりあげて揺れる体をギュッと包み込んだ。
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えるみ(プロフ) - あねもさん» 閲覧ありがとうございます!花言葉についてはあえて触れなかったのですが、分かってくれる方がいて嬉しいです……! (2019年9月22日 16時) (レス) id: 58f336f1ac (このIDを非表示/違反報告)
あねも(プロフ) - とてもおもしろかったです!最後に出てきた紫色のアネモネは、あなたを信じて待つという意味ですか?私自身、紫色のアネモネがとても好きなので嬉しくて思わずコメントしてしまいました!完結、お疲れ様でした! (2019年9月22日 4時) (レス) id: 8c1c97f69f (このIDを非表示/違反報告)
えるみ(プロフ) - *まめ丸*さん» 感動してもらえたなんて嬉しいです.......!またいつか新作作った時はよろしくお願いしますね!ありがとうございました! (2019年8月15日 11時) (レス) id: 24de3ea6a1 (このIDを非表示/違反報告)
えるみ(プロフ) - カゲロウ(白ヰ迷ヰ戌)さん» 完結させられて良かったです!閲覧ありがとうございました! (2019年8月15日 11時) (レス) id: 24de3ea6a1 (このIDを非表示/違反報告)
*まめ丸*(プロフ) - 完結おめでとうございます!!すごくよかったです!感動しました!!えるみさんと出会えてとても幸せでした!!そしてお疲れ様でした!!えるみさんの素敵な作品いつまでも待っています!!えるみさんや作品大好きです!!えるみさんの幸せを願って。また会える日まで!! (2019年8月14日 21時) (レス) id: 7b0adad536 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:えるみ | 作成日時:2019年7月13日 17時