深夜突然家に乗り込んで来た ページ1
一般的に声優はどのような家に住んでいるのか。
アニメや声優に興味のある人間の中には、気になる人も多いことだろう。
実際どうなのかと聞かれると、それは人によるとしか答えようの無い事実である。
芸歴が5年でも10年続けた人物より収入が多いこともある。そして、芸歴が長くなれば、当然ながら収入も増える傾向にある。
今現在、伊瀬谷Aは自宅で優雅なティータイムに勤しんでいた。
わざわざ店まで足を運び仕入れた茶葉…というわけでもなく、彼女のファンから頂いたもので、爽やかなジャスミンの香りが心地いい一品である。
本来であれば彼女は、紅茶を飲みつつ仕事を片付ける時間なのだが、まだそれば出来ていない。
目の下にはうっすらと隈が出来ており、ここ数日彼女がいかに多忙かをそれが物語っていた。
仕事とはいえ、彼女の成心は最早限界と化していた。辞めたい、パソコンのライトを見たくない。
それでも彼女はやらねばならぬ。なぜならば、それが彼女の仕事だからである。
「A〜」
作業に勤しんでいるAに、正面に座っている男は呑気に声をかけた。
決してそちらに意識を向けることなく、彼女は黙々とパソコンの画面と睨み合う。
反応しては負けだ。
誰が言い始めるでもなく、ただ漠然と彼女はそう思った。目を合わせたが最後、うざ絡みをしてくると理解しているためだ。
「Aー」
好青年らしい声色をした男が呼び掛ける。あくまでも好青年らしさがあるのは声のみである。
「伊瀬谷Aちゃーん?」
大勢の子供の中から探し出すかのような声色に、Aは自分の眉間に皺が寄るのを感じた。なんなんだほんとうに、殴りたい。
そんなことを考えていると、「わっ!」と声を出して上からAの顔を覗き込んだ。そして、ついに彼女はキレた。
いや、決してヒステリックに声を荒げたりなどはしない。けれど確かに彼女の瞳には怒りが含まれていた。
「おっさんども、邪魔するならテメェらの知られたくないことSNSにばら蒔くぞ。」
今の世の中で最も恐ろしい事を告げられ、男は黙って座り心地のいいソファーに腰かけた。
「社長を見習えよ」
「いや、まじで吐きそうなんだって」
許して。と微かに掠れる声。
「知らねぇよ、なんでそんなになるまで飲んだの、浪川さん」
「違う、そこの人に飲まされた」
「こら吉野」
一人暮らしにしては広すぎる部屋に、大の大人四人が詰め込まれていたある日の朝方のことであった。
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作者名:志賀 | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/my.php?svd=sab
作成日時:2023年3月27日 18時