《リスタート》 9 ページ12
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夜に会いたい、と例の男にメールをすると、数分も経たずに了承の返事がきた。
『……はぁ、なんの用ですか』
ホテル街へ向かう途中で、待ち構えていたように昨日出会ったばかりの男が待ち構えていた。
「あの男のところに向かうつもりだな?」
『…だったら何だっていうんです』
「あいつと関わるのはやめろ。これ以上関わるつもりなら、お前を公務執行妨害で逮捕する」
『…脅しですか。…いいですよ、別に逮捕しても』
なんの抵抗もなくそういった俺に、安室さんは悔しそうに顔を歪めた。
「なんでそんな簡単に捨てられるんだ」
『そもそもの話、俺には捨てるものがないから』
「友人はいるだろ、蘭さんや園子さん。工藤新一くんも」
『蘭たちは別にそこまで仲がいいわけじゃない。新一はずっと俺の世話を焼いてくれていたけど、それがなくなるなら気楽でいいんじゃない?』
「………だ、そうだ。工藤くん」
『は…?』
安室さんは懐からスマホを取り出した。
その画面に表示されている名前にサッと血の気が引いた。
『…なん、で…』
《A。俺、全部知ってた》
『っ…!』
《ごめんな》
新一の小さな謝罪に、途端に冷静になった。
『……どうしてお前が謝るの』
《…Aがそういうことしてるの知ってて、俺は何もしてやれなかった。昼間も、何も知らないフリをして嘘をついたんだ》
人の嘘は見抜ける方だ。
だが、伝説的女優の息子である彼の演技力は見破ることはできなかったようだ。
新一は知ってた。
俺が体を使って金や情報を得ていたことも。
安室さんが警察の人間であることも。
知った上で、協力していた。
《お前の世話が面倒だとか、そんなこと一度も思ったことない。Aは俺にとって大事な幼馴染みだ。もっと自分を大切にしてくれよ!》
『……誰からも愛されて、俺と正反対の生き方をしてきたお前に、何が分かるっていうんだよ』
搾り出すように出た言葉はとめどなく溢れてくる。
『俺は、これしか知らない…っ!昔からずっと穢れきってるんだ。今更変えられるわけないだろ…!もう放っておいて!』
踵を返してそのまま走り去る。
後ろから安室さんが「おい!」と声を投げてきたが、振り返らずにただ走って、タクシーに乗り込んだ。
タクシーの中で今日会うはずだった相手に場所変更のメールを送った。
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澪々(プロフ) - 096さん» ありがとうございます!楽しみです! (2022年10月11日 7時) (レス) id: d400c2c0a7 (このIDを非表示/違反報告)
096 - 澪々さん» コメントとリクエストありがとうございます!本編、番外編ともに読んでいただけて嬉しいです!リクエスト承りました!お時間いただきますが書かせていただきますのでお待ちください! (2022年10月10日 22時) (レス) id: 5783aede03 (このIDを非表示/違反報告)
澪々(プロフ) - 初コメ失礼します。本編も番外編も、何回も読ませていただいてます!リクエスト失礼します。夢主くんが、零くんの恋人兼同僚だったら…みたいなお話読んでみたいです!できたらでいいです。階級同じで。無理言ってしまってすみません。よろしくお願いします! (2022年10月10日 11時) (レス) id: d400c2c0a7 (このIDを非表示/違反報告)
096 - 瑞希さん» こちらこそ見つけていただきありがとうございます!そう言っていただけると嬉しいです!これからも頑張ります!! (2022年9月1日 16時) (レス) id: 5783aede03 (このIDを非表示/違反報告)
瑞希(プロフ) - 096さんの安室さんは私が想像していた安室さんそのもので、この作品を見つけられて本当に良かったと思っています。これからも頑張ってください! (2022年8月31日 23時) (レス) id: 1e057cbbf5 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:096 | 作成日時:2022年3月13日 21時