. ページ11
.
…ああそうか、彼もその口だったな。でもエーミールはその知識を買われてこの軍の戦略部として配属されている。何もできない私とは違うのだ。
『…言葉を間違えましたね。秀でた才能を使って軍の役に立っている貴方と違い、私は地位にぶら下がってるだけなんです。それが嫌だから変わろうとした。…まぁ、その結果がこれなんですけど。…ッフ、笑えますね。』
窓の外に目をやって訓練している兵を眺める。…そう、私はこの軍で最下層の実力だ。自然と握り拳に力が籠り、手が震える。
em「……そんなことありません。」
包み込むように私の手に自身の手を重ねるエーミール。視線を合わせるとふんわりと微笑みを浮かべた。…この世界に来て初めて誰かに微笑みかけられた気がする。心の底がじんわりと暖かくなって、何故か涙が出そうになった。
em「貴女は十分強いです。皆からの辛い接遇に耐え、それでいて足りない部分を補おうと努力している。そんな貴女が役職に胡座をかいているだなんてあり得ません。」
とても強い眼差しだった。顔色を伺うような素振りは一切なく、ただ私の本質を見抜くような強い、強い光だった。
『でも…現に私は…』
em「なにも剣だけが手段ではないでしょう」
『え？』
専門分野の話だからか、白い瞳がさらに輝きを増す。掴まれた手にギュッと圧が加わる。
em「確かにこの軍の戦闘のベースは剣です。ただ、貴女の場合重い剣を携えてると機動力が落ちる。それに、女性が剣を持っていると警戒されやすくなってしまいます。よって、より軽量でなおかつ攻撃力の高い武器に挑戦してみるのはいかがでしょうか」
自分の中でぐるぐると渦巻いていたモヤが晴れたようにサッと頭が軽くなった。…私にあった戦い方。それが見つけられれば私も力を得られる？
顎に手を当て目線を下に向けるエーミール。真剣に私のことを考えてくれてる。…この人はこんなにあったかい人なんだ…
em「そうですね…銃やナイフがベーシックでしょうか…どちらにせよ基礎的な体力、筋力アップは必然で………え！！？ど、ど、どうしましたか！？傷口が痛みますか？？」
急に慌ててどうしたのか、と聞こうと思ったけど声にならない。漏れるのは嗚咽だけで、頬を伝った水滴を掌に受けた時、初めて自分が泣いてることに気がついた。
『あ…っ、ごめん…なさい。……ぅ、っく…なんでも…ない…』
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 1011人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「wrwrd」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
もち(プロフ) - そらと。さん» そうだったんですね！！少しそうではないかと思ってたところもありまして！！本当にこの作品大好きです！応援しております。 (2021年2月22日 19時) (
レス) id: 21f698680c (このIDを非表示/違反報告)
そらと。(プロフ) - もちさん» こんにちは！ハマって頂けて嬉しいです！！読み返してみて確かに言葉不足だなって思い修正しました。ありがとうございます！簡潔に言うとknさんの後ろに敵さんが居たので守るために発砲しました笑 (2021年2月22日 19時) (レス) id: bc516da084 (このIDを非表示/違反報告)
もち(プロフ) - こんにちは！！この小説めっちゃハマりました！！読んでいて思ったのですが、なぜ夢主はknさんを撃ったんでしょうか、、？自分も考えてみたんですが理解力が足らないようで、、笑何か意味があるんでしたら教えて欲しいです！！！長文失礼しました。 (2021年2月22日 18時) (レス) id: 21f698680c (このIDを非表示/違反報告)
そらと。(プロフ) - 糜爛さん» 憧れ詰め込んでたらメンタル最強女子が出来上がってしまいました、、、wお気に召したならよかったです(・∀・)頑張ります！ (2021年1月9日 13時) (レス) id: bc516da084 (このIDを非表示/違反報告)
糜爛(プロフ) - 主人公凄い…なんでそんな勇気あるんだ。カッコいい。友達になって（）更新頑張って下さい！ (2021年1月8日 17時) (レス) id: 03410a460b (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：そらと。
| 作成日時：2020年8月13日 0時
