［アルスマグナ］短編集 version２！！ (ページ35)

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　僕の番　　榊原タツキページ35

昼休み、僕はずっと窓の外を眺めてた。

太陽がとても温かくて思わず寝てしまいそうなくらい気持ちよかった。

貴「タツキ～？どうかしたの？」

Aちゃんが後ろを向いて聞いて来る。

僕の前の席がAちゃんで、

よく授業で分からないところがあったら聞いてるんだ。

「なんでもないよ？」

僕はにっこりと微笑んだ。

貴「...嘘。またなにかあった？」

他の人は絶対に分からないのに、どうしてかAちゃんだけは分かるみたい。

僕が何を考えてるか。何を思ってるか。

「ねぇ、Aちゃん」

貴「ん～？」

「どうして僕の考えてる事わかるの？」

貴「どうしてって言われてもな～...」

腕を組んで悩みだした。

少し沈黙が続いて、Aちゃんは僕の方を見てキッパリと言った。

貴「わからない！」

「...え？」

貴「わからないけど、多分ずっとタツキの事見てるからかな」

ニッと笑うAちゃんはとても可愛かった。

僕はその時初めて『恋』をした。

そして一か月がたった。

僕は自分の気持ちに気付いたけど、Aちゃんに告白していない。

いや、したくてもできなかったんだ。

だって...友達から聞いたんだ。Aちゃんには彼氏がいるって。

僕は邪魔するつもりない。

Aちゃんに幸せになってほしいから、

これからも応援しているつもりだった。

ある日の放課後、Aちゃんが帰ろうとしてるのを呼び止めた。

「Aちゃん...、何かあった？」

貴「...別になにもないよ？」

あの日と同じようにニッと笑った。

でもその笑顔は僕の好きな笑顔じゃない。

「...嘘でしょ？一体何があったの？」

いつも笑ってたAちゃんが、今日は一度も笑わなかった。

笑ったと思ったら悲しそうな顔をしてたから。

Aちゃんは泣きながら僕に話してくれた。

彼氏に浮気されたって。

ひどい。僕だったら絶対に泣かせたりなんかしないのに。

貴「どうして何かあったってわかったの？」

あの日と同じような会話。

でも、今度は僕が言う番。

「ずっとAちゃんのこと見てたから」

恋って気づいてから、ずっと目で追いかけてた。

考えても考えてもAちゃんの事でいっぱいだった。

僕はギュって抱きしめて、Aちゃんの耳元で囁いた。

「僕じゃ...ダメ、かな？」