【聖F学】エリンジュームの花束を。【派生作品】 (ページ9)

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3,【シャングリラと偽善の燈】ページ9

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遠くから声が聞こえる。聞き覚えのある声だ。
溶けそうな位優しくて、甘い声色。そんな声は、ナハトの名前を呼んでいた。

「………ん」

顔に強い光が当たって、目を細めながらも起き上がる。夜は明け、朝を迎えた世界を太陽が照らす。ナハトの名を呼んでいたのはショコラだった。
やっと起きた…とショコラは苦笑いで隣に座っている。

「……眩しい。太陽の光嫌いなんだよね。」

ナハトはベストについているフードを被った。ナハトの顔が影で黒くなる。日光まで嫌いな吸血鬼である。
一方で、ショコラの側で眠った自分に驚いている。寝顔を見せるなんて、なんて無防備な事をしたのか。しかも、よりによって信者(バカ)に。

「…てか、アンタ夜通し起きてたわけ」

「あはは…まぁ。ナハトさんを残していくのもあれかなーと」

「お人好しだね。流石バカ。」

褒めているのか貶しているのか。大体後者である。
ショコラは「やっぱり嫌われてるなぁ」と思いながら少しムッとした。それを見てナハトはそっぽを向くと言った。

「勘違いすんなよ、オレはアンタが嫌いな訳じゃない。“アンタら”が嫌いなんだ。別に特別アンタが嫌いなわけじゃない」

昨夜の優しい声色は何処へ言ったのか金属のように冷たい声色をしていた。そこにはショコラ“達”に対する嫌悪感がじわりと滲み出ていた。
少し間を開けて、ナハトは喋りながら朝日を背に立った。

「てか、アンタ部屋戻って少しでも寝たら？授業中寝たら、困るのアンタだよ。オレに話し掛けられた位で涙目のアンタが、先生に怒られるの耐えられるとはとても思えないんだけど」

「あ……そうかも…」

「実はさっき寝てたなんて言えない…」と思いながらショコラは苦く笑った。嘘下手だなぁ、と内心思いながらナハトは鼻で小さく溜息をつくと、後ろに体重をかける。
後ろへと傾いたナハトの身体は重力に従って徐々に下へと落ちていく。

「っな、ナハトさん！？」

「アンタとは縁がありそうで嫌だよ。」

びゅううと唸る一際大きな風が吹くとナハトはショコラの視界から消えた。急いでショコラは下を覗いたが、そこには誰もいなかった。当然落ちた跡も。
魔法か、とショコラはほっとすると、箒に跨った。

朝がやって来た。学園の暗い廊下に、静かに燈がついた。