4,【白鳥と醜い烏の子】 ページ15
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『オレとアンタじゃ釣り合わないんだよ』
そう残して、何かから逃げる様にその場を去った。ショコラはペタンと地面に座り込んで、ナハトの背中をずっと見ていた。
思えば、ショコラが見るのはナハトの後ろ姿ばかりだった。
「……オレじゃきっとダメだ………一緒にいたら」
遠くの窓からショコラを見ながら小さく呟くと、行き場を求めるように校内を歩き回る。
「(これで、アイツも来なくなるかな)」
さっきは、わざと突き放すように言ったのだ。
でも実際、釣り合わないものは釣り合わない。
魔法の才能がないナハトと、魔法のできるショコラ。ひねくれた面倒くさがりで、嘘吐きなナハトと、素直で純粋で、嘘が下手くそなショコラ。
ナハトは信仰していないのを隠してないから、いつ退学だとかカレッジを落とされるかなんて解らない。
しかも大人になったら、この神を信仰する世界ごと壊してしまおうと考えている。
自分だってあの人に興味はある。でもショコラがそのせいで傷付いたり穢れたりしたら嫌だ。
「…なんだ、これ…………」
脳裏に焼き付いて離れない、いつか見せてもらったショコラの笑顔。靡く白い髪と、真っ直ぐ自分を見てくれる青い瞳。
思い出す度に、もう１回だけ会いたい。そう思ってしまう。喉の奥に突っかかって出てこないその答。
「気持ち悪い………」
感じたくなかった心の奥にある感情と、その感情のせいでぐちゃぐちゃと掻き回される頭の中や腹の奥。泥が身体中にまとわりつくようだ。元々汚れているのに、これ以上罪深くなってどうしようというのか。
苦しい。これ程胸が締め付けられる苦しみに出逢うのは久方振りだ。多分、ショコラを傷付けたからだろう。
そりゃあ誰だって、仲良くなりたい人に「釣り合わない」なんて言われたら傷付くだろう。
傷付けない為に傷付けて突き放す。そんな正義があるだろうか。世界はとことん汚れていると思うのだった。
空は赤く染まり上がり、ナハトの髪色に似た黒い鳥達が空を駆け上っていく。
それと同時に気持ち悪さのピークとなり、腹の中のモノが上へと上ってくる感覚に襲われる。せめて手洗いで吐こうとずるずると壁伝いに歩いたナハトは、我慢出来ずに口までやってきたそれを吐き出した。
――――これでこんな気持ちも全部吐き出せたら良いのに。
そう思いながら、ナハトは硬い廊下の床に倒れた。
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