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突然のことで、勢いで誘ってしまったショコラ。
誘った本人すら、断られると思っていた。
隣で詰まらなそうにまじまじと本を見詰めているナハトにショコラは小声で話しかけた。
「な、ナハトさん、何で私の誘いを受けてくれたんですか?」
「…別に。暇だから。」
これと言った理由を挙げないナハト。
ショコラは隣で、うーんと頭を悩ませた。
ナハトが読んでいるのは、高度難解魔法の呪文と魔方陣の本。
“性格はともかく、ナハトさんはロッソカレッジなんだから、充分優秀なはず……。”とショコラは思い、聞いてみた。
「ナハトさんって、実は真面目なんですね。」
ふふ、と軽く笑うと、
「適当に取っただけだ。魔法なんて、大嫌いだ。」
窓の外を眺めながら寂しそうな瞳で素っ気なく呟いた。
窓の外は快晴の青空で、鳥が自由に飛び回っている。
「へぇー。私は魔法は好きだよ。なんかこう…素敵じゃないかな…!」
上手く言葉を紡げないショコラ。
でも、言いたいことは伝わったようで、少し迷った表情を浮かべた後、
「アンタがそう思うんなら、そうなんじゃねぇの。」
彼が紡いだ言葉は否定するような肯定するような曖昧な言葉だった。
優しいようで、隠れた刺々しさがある言葉。
“私に合わせてくれたんだろうな。”そんなことをショコラは考えていた。
「ところで………。
…私達、さっきから物凄く注目されてません?」
ショコラの自意識過剰等ではなく、本当に視線が集まっているこの状況。
聞き耳を立てる男子生徒、コソコソと話ながらはしゃぐ女子生徒。
早速、噂になっているのか、さっきよりも図書室には生徒が多くなっていた。
面倒そうに、生徒を睨むが退かない生徒も多い。
ナハトが他の生徒、しかも人前では神を信仰している為、周りの生徒には神を信仰していると思われているショコラと居るのが、かなり珍しい様だ。
「…はァ。……移動するぞ。」
「あっ、はい。」
遂に嫌気が差したナハトは、ショコラの返事を聞かずに立ち上がる。
早足でショコラを置いていく様に歩いて行ってしまう。
ショコラも軽く走りながら着いていくと、急にナハトは振り向き、ショコラが着いてきているのを確認すると、また、早足で歩き出す。
“振り向く辺りがナハトさんらしいなぁ。素っ気ない優しさがあるんだよね。”ナハトの背中を見詰めながら、そっと、優しく笑ったショコラは、そんなことを考えながら歩いていた。
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