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街灯の明かりが、不意に消える。正確には、街灯に何らかの布が被さって光が覆われてしまった。ミイラ男達は、街灯を見上げた。すると、側の木がガサガサと不自然に揺れる。風は、吹いていない。
そして、ボイスチェンジャーを使ったような、不自然な声色の笑い声。それはどんどん近付いてきて…。
「Trick or Treat!!」
トールは、ミイラ男の首元に玩具の剣をぴたりと当てて驚かせた。
「うわぁっ!?」
ミイラ男は体を大きくビクつかせ、トールから飛び退く。心臓に手を当てている。相当驚いた様だ。その様子を見て、ロキは愉快そうに高笑いした。ロキは、街灯に引っ掛けたコートを取り、羽織り直す。
「きっちり、30分以内に驚いた声を聞かせていただきました」
「俺達の勝ちだな。さて、負けた奴はどうするルールだったっけ?」
ロキは手を差し出す。驚いて声を出してしまったミイラ男は悔しそうにしながらお菓子を入れた袋をロキの手に置いた。ロキは代わりにチョコレートをミイラ男の手に置いてやり、「毎度ありがとう」と笑った。
暫くすると、すっかり辺りは暗くなり、空は闇に包まれた。首都であるスヴァルツヘイムは、夜だと言うのに明るい。その賑わい故に、星さえも地面に引きずり下ろした。…田舎に行けば星だって見えるが。
ゲームの終わりが近づいている為、集まってお菓子の集計所まで戻ろうとしていると、人混みの中に紛れて泣いている子供を見付けた。トールは、先を歩くロキを呼び止める。
「申し訳ありませんロキ様、少しお待ちいただけませんか? 子供が」
「子供? …迷子か?」
トールは、建物の端で泣いている少年に声を掛ける。
「こんばんは。こんな時間にどうしたの? お父さんは?」
「はぐれちゃった…、どうしよう…おうち分かんないよ…!」
「あーあー…泣くな泣くな」
「…大丈夫、私達がいますからね。一緒に探しましょう。…ロキ様、良いでしょうか」
ロキはいちいちそんな事聞くな、という様子で肩を竦めると、「構わない」と言った。
スカルに仮装した少年に父親の特徴を聞いて、周囲を見渡す。狼男に仮装しているそうだが、狼男なんて山ほどいる。トールが子供を泣き止ませている間、ロキは顎を摘んでどうやって父親を見付けるか考えていた。
「ふん…」
すると、良い方法──と言うより、面白い方法を思い付いた、という様子で、ロキは二人は振り返る。ロキの目は、子供が新しい玩具を欲しがるように輝いていた。
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