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No.141 ページ42

…各々、思うことがあるらしい。何か決心したような顔で上を見上げるもの、自分のした事を見直すかのように己の拳を固く握る者、武器を置いて保護した子供達の元へ行く者。
「そう。そうだよ。思う事をすればいい」
オレはそう思いながら不揃いな前髪をぐしゃぐしゃと掻き回した。


みんなにどうしたいか聞いたのは、自分が何をすれば良いのか解らないからだ。ロクに問題に答えることも出来なかったおかしな頭じゃ、正しい答も自分の考えも解らない。…学校に行ったら分かるんですか…?なんて。


重い足をずるずると引き摺って、オレは人探しに歩き始めた。何処に向かっているかなんて解らない。向かう場所なんてない。あるなら教えて欲しい。こんな愚かな自分に、答なんてモノがあるのなら。
その人に答を教えて欲しくて、霞む視界の中足を動かした。


兄に、兄に。たった一人、昔からオレを見てくれていた人。オレの、家族。あの人の事だ、今頃「大変だな」なんて言って笑っているんだろう。なぁそうだろう?
血の臭い。目を開いたまま動かないその男は、何処か遠くを見ていた。茶色の瞳は濁り、身体は脱力し硬く冷たい。見覚えのあるその真っ黒な頭髪とおちゃらけた顔は、紛れもなくオレの求める探し者だった。


「アンタもそうやってオレを置いて行くんだね」


苦し紛れの独り言は、周りに反響した。厭に静かな辺りは逆に精神を逆撫でする様だった。
オレはいつもそうだ。人間ってのは、伝えたい事も、本当の事も、失ってから気が付く。「ありがとう」も「ごめん」も「さよなら」も全部全部全部。

兄は何かを握りしめて持っていた。手帳だ。血塗れた手帳を手に取って見る。1ページ目に挟んであったのは写真だった。兄とオレだけが写った優しい写真。なんだか兄に話しかけられているような気がして。


「わかったよ…、俺も大人になれって言うんだろ…?わかってるよ……、アンタの言う事なんて」


手帳を握りしめてしゃがみこむ。
兄貴(アンタ)を思い出して溢れてくるのは涙だけ。震える声と唇じゃ、感謝の言葉も別れの言葉も口ずさめなかった。悲しい、悲しい、悲しいよ。なんで置いてくんだよ。アンタはオレの味方でいてくれたじゃないか。


「…ホント、悪い大人だよ、あんた…」


未来を創るのは、子供で、大人だ。
子供のまま大人になろう。この世界をネバーランドにしよう。子供をやめて、大人になるんじゃない。
だから俺は…大人(こども)になる。

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花梨(プロフ) - 皆さまお疲れ様でした〜 (2018年9月14日 22時) (レス) id: e3aad0174a (このIDを非表示/違反報告)
透明少女(プロフ) - お疲れ様でした!あまり参加出来ずにいて申し訳ありませんでした…!本当にありがとうございました!! (2018年9月14日 21時) (レス) id: 6dddb2cb16 (このIDを非表示/違反報告)
睦都(プロフ) - 初めからずっと見てました!主催者様、参加者様の皆様お疲れ様でした!剣士君たちとても好きです(*^^*)ほんとうにお疲れ様でした (2018年9月14日 19時) (レス) id: 3a040f6594 (このIDを非表示/違反報告)
羊素。(プロフ) - 遂に完結ですか…少し寂しい気もしますが、主催者様、及び参加者の皆様、お疲れさまでした。 (2018年9月14日 5時) (レス) id: dc73ea1538 (このIDを非表示/違反報告)
紅葉 - お疲れ様でした! (2018年9月13日 18時) (レス) id: c46d432f11 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:カレーライス x他10人 | 作者ホームページ:http:/  
作成日時:2018年8月4日 11時

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