検索窓
今日:8 hit、昨日:8 hit、合計:12,606 hit

No.125 ページ26

彼と出会ってから、沢山の感情とその使い方について学んだ。
彼が私を「白瀬」と呼んでも、苦しみ叫ぶ子供達を胸に抱いても、その怒りや辛苦を幸せに変えることを覚えた。

それから導き出した答えは、この世界は思っていたよりずっと美しいということ。

この世界は幸せにしてくれるヒトで溢れている。惨苦に染まったそれを討ち粉々にする時、何よりも甘い幸せを手に出来る。

昔こそ違ったが、今や私はこの世界を望んでいる。希望に塗り変える必要なんて、初めから無かったんだ。不純な硝子は叩き割る為のもの。破片に切り裂かれて、もっともっと闇に堕ちてしまえばいい。完全に混濁した瞬間、全てを壊して幸せしかない世界を創る。

だから、壊すのは最後でいい。彼だって、最後にしようと言った。それなら光に焼かれるその時まで、この世界のもの全ては晴れない闇と苦痛に呪われておくべきだ。それがきっと、私を、皆を、世界をシアワセにする。
然るべき時、楽に終わらせる為に。面倒事は嫌いだ。

それを理解した今、ただ世界の全てが素晴らしい。全てが楽しい。
血を浴びるのも、刃に貫かれるのも、ヒトの顔が苦痛に歪むのも。それが幸福の土台になるなら、何を迷う必要があろうか。約束の為になるなら、何も悲しむ必要はない。世界はシンプルに幸せだけで満ちていればいいのだから。それ以上の考えも感情も、きっといらない。

彼につけられた傷さえ今は何とも思わなくて、ふわふわの袖を捲って腕の包帯を外す。
影で裂かれたそこは渦を巻く様な痕と共にどす黒く蝕まれていて、青白くて気味の悪い肌によく映えている。見た目に反して痛みは無く、寧ろ愛おしいくらいだった。目を細めて撫でると、裂傷特有のざらついた感触が指を這う。それは苦しくも心地よくて、確かに幸せの証だった。

この感覚がもっと欲しくて、向かってくる大人も逃げる大人も識別せずなぶり殺した。中には仲間達を傷付けた奴もいた。私を知っているらしい奴もいた。
それを屠る度、奇妙に停滞した脳から多幸感が溢れて、喜びを含んだ吐息が自然と零れる。
――もっとこうしたい。仲間達が生きる幸せな世界の為に、不純物を排除したい。その瞬間を思うだけで、胸が打ち震える。

果てなき快楽主義に走らされたのは誰のせいだったか、今となっては自分でもよく分からない。
だけどそれも世界の礎になるなら、もう深く考えるだけ無駄というものだろう。
彼とは少し違った理由で、けれど彼らの為に、刃を振り上げた。

No.126→←No.124



目次へ作品を作る感想を書く
他の作品を探す

おもしろ度を投票
( ← 頑張って!面白い!→ )

点数: 8.6/10 (19 票)

この小説をお気に入り追加 (しおり) 登録すれば後で更新された順に見れます
7人がお気に入り
設定タグ:掃き溜めの星 , リレー小説 , オリジナル , オリジナル作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告

感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)

ニックネーム: 感想:  ログイン

花梨(プロフ) - 皆さまお疲れ様でした〜 (2018年9月14日 22時) (レス) id: e3aad0174a (このIDを非表示/違反報告)
透明少女(プロフ) - お疲れ様でした!あまり参加出来ずにいて申し訳ありませんでした…!本当にありがとうございました!! (2018年9月14日 21時) (レス) id: 6dddb2cb16 (このIDを非表示/違反報告)
睦都(プロフ) - 初めからずっと見てました!主催者様、参加者様の皆様お疲れ様でした!剣士君たちとても好きです(*^^*)ほんとうにお疲れ様でした (2018年9月14日 19時) (レス) id: 3a040f6594 (このIDを非表示/違反報告)
羊素。(プロフ) - 遂に完結ですか…少し寂しい気もしますが、主催者様、及び参加者の皆様、お疲れさまでした。 (2018年9月14日 5時) (レス) id: dc73ea1538 (このIDを非表示/違反報告)
紅葉 - お疲れ様でした! (2018年9月13日 18時) (レス) id: c46d432f11 (このIDを非表示/違反報告)

作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ

作者名:カレーライス x他10人 | 作者ホームページ:http:/  
作成日時:2018年8月4日 11時

パスワード: (注) 他の人が作った物への荒らし行為は犯罪です。
発覚した場合、即刻通報します。