掃き溜めの星。

No.82 ページ33

ミルクが討たれたその日に、風牙からレブル拠点から半径5mk管内の地図を提供してもらい、式が撮った映像を頼りにミルクがどの様にしてラビッシュの拠点に向かったのかを割り出した。
式はミルクを追跡していた訳ではない為、断片的にしか映ってない所も幾つかあったが、レブルとラビッシュを繋ぐルートの真ん中に差し掛かった時、突如映像に黒い人影がちょくちょく映る様になったのだ。
初めは一般人かと思われたが、その人影の後をミルクが追う様に映り込む様子から、十中八九この人影が原因である事が分かる。
残念ながら映像の鮮明化性能を式に搭載していなかった為、人影の正体を暴くまでには至らなかった。しかし、その人影の特徴と緊急治療室に運ばれたミルクの状態を見て、この人影がラビッシュの首領・黒瀬剣士ではないかと推測している。
やはり隠密では無かったかと斎槻は呆れたが、何故彼が慣れないラビッシュ首領の尾行を行なったのかは分からない。
因縁、仇、偶然、知り合い、幼馴染──

斎槻は溜息を漏らすと、今度は縫われた線にそって十数カ所に小さく円を描く。ラインの真ん中を中心にその円は広がるが、レブルの拠点周辺はまるで白かった。

「なんだそれ」
「此処五日間でラビッシュと戦闘になった区域に円で囲ってみた。真ん中は二つの拠点に通ずる道の縫い目だから多い」
「こうして見ると、結構な頻度だな」
「だが、まだレブル拠点周辺までは来ていないんだ。相手はまだ此処を割り出せていないのか、それとも……」
「分かっていながら襲撃しないのか、か?」
「此処を襲撃しても、相手にはメリットが無いからね」

まぁ、分からないけどと呟いて、軽く欠伸をした。
この五日間、あまり眠れていない。不摂生はいけないと分かっているが、様々な懸念材料を抱えていては眠る事なんて叶わない。
再び式の映像を確認すると、ラビッシュの拠点へと真っ直ぐ向かっている林檎の姿が映し出される。

「 あの様子だと偵察のつもりで行ったんだろう。全く、偵察なら最低でももう一人連れて行くのがセオリーだろ。これで囲まれたりしたら、此方が不利になるのは目に見えている。一応式を送ってみるが……念の為、誰かに三葉さんの後を追わせるか」
「お前、本当面倒臭い性格してるよな」
「喧しい。君はとっととその怪我を治せ」
「言われなくとも」

ついでだからコレ折れと斎槻は拗ねた様に折り紙を出すと、千羽鶴にするか? と琉架は頰を緩めながら返した。勿論、斎槻の返答はNOである。

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