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バラトは私の一次創作の主人公。紫色の髪の毛に白のメッシュが入っていて、右側だけ前髪が長くて隠れている。実際は左側も長いけれど、三つ編みしてピンで留めているのだ。左耳だけに着けたピアスに、彼のトレードマークのライムグリーンの上着。そして睫毛の長い真っ赤な目。
バラトは世紀の大犯罪者だけれど、自分の犯罪は芸術だと思っている。その芸術論に則って彼は生きている。バラトの芸術論は、私にとっては救いだった。
私の命の方が軽い、そう言えば、彼はこう言うだろう。
「あーそうかもな。お前が思うならお前から見た手前の命は軽いだろ。…ま、自分以外の誰かの為に命を捨てる事に意味を感じるんだったら、自分以外を皆捨てちまえ。自分の命が不要だと思う世界なんていらないだろ」
否定しない。彼は、きっと何を言っても否定しない。肯定して、認めて、そして丸め込んでしまう。ずるい。多分、天職は犯罪者ではなく、立てこもりや死のうとしてる人を説得する刑事とかだろう。バラトに説得されたらやめるよ。
部活で辛かった時はいつも彼が側にいた。トイレで泣いてる私に、「よくやったよ」と。負けて悔しくて堪らなかった時に、「そんなもんじゃねえだろ」と。
いや実際にはいないけど。あくまで心の話だ。
私の創った皆は、いつでも私の心の中にいる。…正確には脳だけれど。
皆だったらどうするか考えると、不思議と自分が正しい行為をしていると錯覚できる。だって、皆は滅茶苦茶だけど、私にすれば正義のヒーロー以外のなんでもないからだ。悪役でもね。
比較的新しく創った物語を更新して私は絵を描き始めた。
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家を追い出された。
本当に唐突だけど、家を追い出された。お父さんの地雷を一個踏んだので、もう一個踏んだら何個踏んでも同じだなと思って、立て続けにお父さんの地雷であろうと我慢してきた事を全部言った。多分地雷原を制覇した。更地になった代わりに家から追い出された。
どうしよう。夜ですケド。警察に見つかったらどうするっつーか怪しい人に連れ去られたりしたらどーするつもりなんでしょうか。いやいっそそうならないかな。痛い目見ろよお父さん。
家の前でいつまでも突っ立っていても仕方ないので、近くの公園まで歩いた。
午前中、雨が降っていたから、アスファルトが濡れて鏡のようになっている。街灯の光が反射して、明るさが2倍になっていた。私の身の自由を祝っているようだ。夜なのに明るかった。
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