□ 第109話 いない □ ページ9
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ステラはホテルのベッドの上で、デウスの帰りを待っていた。既に日は暮れ、腹の虫も鳴り始めている。デウスが居なくては夕食に行こうにも行けない。いや、そんな事を心配するより──遅いのだ。帰ってくるのが。
幾ら偽物探しに手こずっているとは言え、ここまで時間を掛ける必要も無いだろう。不意に何かに巻き込まれたのではないかという思考が頭を横切る。直ぐにデウスの携帯電話の位置を確認する。すると、町の外れの位置情報が現れた。「よかった、いた!」ステラはGPSが示した位置へ、胸を撫で下ろしながら向かった。
「デウス? こんな時間まで何してるの?」
GPSの場所まで辿り着くと、ステラはデウスに声を掛ける。目の前は、デウスがいるはずの場所。そういるはずだった。そこにはデウスは居らず、身の危険を感じたデウスがせめて、と置いていったスマートフォンだけが横たわっていた。ステラの目はそのスマートフォンに釘付けになった。デウスは一体これを置いて何処へ行ったのだ、と。
しかし、流石自分の弟だ、とステラは思った。連れ去られる寸前なのなら、身元の分かるモノを落として連れ去られるのが良い。何故なら、被害者が最後に居た場所が分かるからである。その周辺の防犯カメラの映像などを追うことが出来る為に、そうするのが良い。
安易に考えれば、「GPSがあるならずっと持ってればいいじゃん」となるかもしれないが果たしてそれはそうだろうか。折角持っていても奪われれば意味がないというものである。
デウスは負けると確信していたのかもしれない。だから、自分を見付けてくれるのを待っているのかもしれない。
ステラはスマートフォンを拾い上げる。
「……っデウス…、わかった。必ず見つける。待ってて」
ステラはスマートフォンでバラトに電話を掛けた。バラトだから携帯を何個も持っていて、この電話番号を使っていないかもしれないが使っていないのなら会いに行くまでだ。するとプツ、と音が切れた後「もしもし」と機械的な音が混じったバラトの声が聞こえてきた。
歩いていた足をどんどん速め、最終的には走りながらステラはバラトに現状を伝えた。
『取り敢えずうち来い。お前のお得意のハッキングの道具もこっちのがあんだろ』
「言われなくてもそうするつもり!」
一方バラトは既に準備を始めていた。最後の位置が分かっているのなら簡単な話。そして偽者に繋がるヒントでもある。これでデウスが無事で居れば──完璧なのだ。
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くろせ(プロフ) - 桐箪笥さん» あぁ! ホントですね!! ご指摘ありがとうございます、訂正致します! (2019年9月1日 20時) (レス) id: 172c2d6dd4 (このIDを非表示/違反報告)
桐箪笥(プロフ) - 36ページの違いドロドロは血がじゃないでしょうか?違うのなら申し訳ないです (2019年9月1日 17時) (レス) id: c5094549cd (このIDを非表示/違反報告)
くろせ(プロフ) - Noel*26さん» ありがとうございます! やっと出てきましたね〜、ここまで来るまで長かった…(笑) (2019年9月1日 6時) (レス) id: 172c2d6dd4 (このIDを非表示/違反報告)
Noel*26(プロフ) - 相変わらずの早起き更新お疲れ様です( ^ω^)ついに「ストックホルム症候群」という単語が本編に出てきましたね...うー、続きが気になる気になる木です(は?)これからも応援しています( ^ω^)更新がんばって下さいー (2019年8月31日 7時) (レス) id: 3a6dfc07f6 (このIDを非表示/違反報告)
くろせ(プロフ) - 桐箪笥さん» ありがとうございます! 頑張ります! (2019年8月26日 22時) (レス) id: 172c2d6dd4 (このIDを非表示/違反報告)
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