ストックホルム系犯罪譚【オリジナル】３

□ 第102話 ご依頼 □ ページ2

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「もう、デウス。幾ら千秋ちゃんが好きでも、嫉妬を千秋ちゃんの前で出しちゃダメだよ。この前言ってたよ、千秋ちゃん。“落ち着きがあって優しい人が好き”って」
「あーもー…、全然千秋の前じゃ上手く行かない…」
「何々、デウスさん千秋さんが好きなの？」

　テーブルに突っ伏したデウスは、憂鬱そうに溜め息を吐いていた。この会話は、そこでエアコンの修理をしているバラトには聞こえていない様である。デウスの前にステラと那楽は並んで座り、悩めるデウスの心の叫びを聞いた。

「だって可愛いじゃん…なんで千秋がいじめられてたのか分かんない。そのお陰で会えたからいいんだけど。…千秋の事考えてると心臓が思うように動かないんだ…」
「ん〜···、多分デウスは、千秋ちゃんの前でかっこよくなろうかっこよくなろうって思いすぎなんだよ。自然体のデウスが一番かっこいいんだよ？」


　デウスにとって恋敵であるバラトは、憧れの存在であり自分を暗闇から引っ張り出してくれた救世主だった。デウスが欲しいものを全て持っている。出会ったあの日からずっとその思いは変わらないのに、そこに嫉妬という感情が加わって上手く振る舞えない。
　愛だの恋だの、と言うがそれ以前に恋敵が問題なのだ。勝てるはずがないと思えば思うほど自信がなくなっていく。

　本当は千秋の手をとって無理やりにでも連れていきたいが、それがどうしてもできない。手が震えるのだ。何に恐怖しているのかは分からない。ただ、どうしても千秋に触ることが出来なかった。

「…あああもうやめだ、こんなこと考えたって仕方ない…。仕事の事考えよう」
「そうやって仕事に打ち込んで結局オーバーワークで倒れるのがテンプレ。もう2回倒れてる」
「だって他に考えることないし」
「頭の中仕事か千秋さんしかないって相当じゃん」

　仕事と言えど半分頼みである。デウスはメールを見ながら「俺は別に殺し屋じゃねーんだけどな」と呟いた。ステラはそうだねぇ、と目を伏せた。
　この頃、“何でも屋”の二人に殺しの依頼が来る事が多い。殺し屋に頼めばいいものを。本来の何でも屋は、家事を手伝ったりものを直したり、何でもしてくれる何でも屋だ。が、金が必要だった二人は、その何でもを越えて犯罪の道に進んだ。

　正直デウスはうんざりしていた。「そいつを殺してほしい」「アイツを殺してほしい」「証拠隠滅を頼みたい」このままただ淡々と殺すのを続けていたら、“また”──目が濁りそうで。

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