偽りに染まってしまう前に【おそ松さん】 (ページ21)

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続ページ21

彼が産まれた意味など、それまでは無かった。

教会に彼が入ったとき、私はその命の短さを感じてしまった。身体が弱いらしい。でも、私には関係無かった。
神父は彼を看病し、その仲間は神父の代わりに仕事をしていた。仲が良いのだな…と私は何気なく見ていたけれど、彼はとても羨ましそうに瞳を光らせていた。彼は望んでいた、神父とその仲間と過ごす、永久(とわ)の時間を。
私はこれを、転機だと感じた。使いだったトド松を失っていた私は、彼を新しい使いにしようと考えていた。しかし…トド松は生まれながら多めの魔力を得ていたが、彼は魔力を持っていないどころか、ただの人間だ。使いは、元々天使の中から選ぶもの。人間を天界に引き込んだことがバレれば、大罪にも成りえない。
しかし私には、それを隠す程の魔力の所有者に思い当たりがあった。

十「女神様…僕、どうすればいいですか？」
使いとして契約を終えて天界に来た彼は、オドオドとしながら私の服を掴…もうとしたが、罰が当たると思ったのか、手を引いた。
彼女「そんな緊張しなくていいよ、主従関係といってもそこまで堅苦しいものじゃないし…」
私が言うと、彼は改めて私の服を掴む。…ひよこみたいだなぁ。
私は彼を自分の部屋へ案内した。そして、箱に入った桃色の石を取り出す。
彼女「では、条件の通り、貴方の顔を他の顔へ変えます。ちょっと痛いけど、我慢してね」
私は彼の腕を持ち、細長い楕円(だえん)型の石を、手首に差し込んだ。彼は痛みに少し顔を歪ませたが、ジッと手首を見ている。
私は魔術を唱え、石を彼の手首へ入れ込んだ。仄かに光っていた灯りは少しずつ消え、私は顔を上げ、目を見開いた。
嗚呼…あの子の顔だ…。
十「…女神様、終わりましたか？僕も見たいな、鏡ください」
少しだけ上がった口角は、私の記憶の中にいる愛しい少年を思い出させる。先程まで居た彼では無いような気がする。
私は十四松の顔に、トド松の顔を貼り付けることが出来た。
十「…女神様？」
愛しい顔の彼は、呆然とした私を心配してくれた。私はこれからやらなければならないことを思い出し、深く息を吐いた。
彼女「何でもない…じゃあ次は、魔力かな。私の友人に所有者が居るんだけど、特に使ってないみたいだし、貰おうかなと思ってるんだ」
彼は頷き、また私の服を掴んだ。可愛い…。
私は転送魔法の準備を始めた。家の前でいいかな？
このときの私は、まさかそこで悪魔に会うなんて思ってもいなかった…。