偽りに染まってしまう前に【おそ松さん】 (ページ20)

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No.14 ページ20

僕が産まれた意味など、それまでは無かった。

僕は割と高貴な生まれだった。その街ではかなりの有権者である父の一人息子だった僕は、当然周りに期待された。
でも僕は、何も出来ない無能だった。身体も弱く、学力も運動神経も悪かった。進んで事を起こす性格でも無かったし、泣き虫だった。
父は僕に呆れた。「お前にこの家系を支えることは出来ない」と。母は僕を睨んだ。「何のために産んでやったと思ってるの」と。
僕は泣いて泣いて、15歳のとき、家を飛び出した。居場所など無い僕は、街をさまよい、そのまま疲労で倒れてしまった。僕はもう、駄目なんだと思ってた。
そのときに、僕は2人の少年を見た。
彼らは僕を教会まで運び、体調が治るまで看病してくれた。見た目からすると、片方は神父で、もう片方は魔法使いだった。2人はとても仲が良いらしく、いつも楽しそうに会話をしていた。
僕はそれが、心底羨ましかった。
元気になってから、僕は2人には何も言わずに教会を出た。感謝の気持ちとして、ベッドの上に花を乗せておいた。
僕はそのまま、ある場所へ向かった。

この街は神の加護を受けているのだと、住人は共通した思考を持っていた。それは昔からずっと続いているもので、街の奥にある山の頂上には、今も大きな十字架が刺さっている。僕は十字架を目の前にして、走っていた足をゆっくりと止めた。
人が居る…否、恐らく人ではない者(・・・・・・)が、そこに立っていた。本で見たことがある、この街を守る神の絵。その絵と同じような美しい横顔で、彼女は凛と立っていた。
？「貴方は…女神、様…？」
彼女はこちらを見て、頷いてから微笑んだ。
彼女「えぇ、そうですよ。私は貴方をずっと見ていました。貴方の願い…私は叶えることが出来ます。勿論、条件もありますけどね」
そう言いながら、女神様は僕に近づいた。そして僕の頬に触れる。
彼女「貴方が魔力を持つこと、人では無くなること、それから…この顔を他の顔に変えること。全てこちらが出来ることなので、貴方は何もしなくていいですよ。この条件を認めてくれれば、貴方の願いを…共に過ごしたい2人との時間を造ってあげましょう」
僕は教会で会った2人と、生きたかった。彼らのように仲良く、楽しい人生を過ごしたかった。でも、身体の弱い僕には時間が無かったんだ。
僕は頷く。女神様は僕に微笑み、額を合わせた。
彼女「ありがとうございます。では…
私の使いと成りなさい、十四松」
視界が明るく輝いた。