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「言うて、確かに魔王ってなんで倒されるべきなんやろ」
不意にゾムが言った。
「魔王やからちゃうか」
「何人も人間を殺しとるからちゃう？」
ゾムは真っ直ぐ彼女を見た。彼女は、驚いたように少しびくり、と肩を上げた。ついでに関係ないところの電球が割れる。
「お前、」
「なんですか」
魔王に対してお前呼ばわりをした忍者は、臆することなく続けた。
「町の人を殺したことあるか？」
「正当防衛です！」
魔王曰く。
人の家に勝手に入ってきた挙げ句、罵倒したり剣で刺したり、魔法で殺そうと試みたりしてきた、とのこと。
「あなたたちだって魔力はあるはずでしょ」
「せやな」
特に黒魔道士のコネシマと、白魔道士のトントンは深く頷いた。
「私はそれが人より少し多いから、配慮してこんな森の中に引きこもっているのに」
「少しちゃうやろ」
魔王本人はシリアスな顔をしているのに、ゾムは容赦なく突っ込みを入れた。魔王は特に気分を害する様子もなさそうだ。
「行くとき話したやん。魔王案外ええやつ説」
「言うてたな」
「子どもも殺さへんし。それはなんでなん？」
「私案外子ども好きなんです」
理由になっているのかはさておき、魔王はそう答えた。
「だからかな、イタズラされてもあんまり怒りが沸いてこなくて」
イタズラ、と言うが子どもたちは本気で魔王を退治しようと殺しにかかっていたはずだ。魔王はやはり魔王である。
「もう来れないように、念のため記憶を消して送り帰しています」
「ほら」
ゾムは仲間の方を見た。
「こいつ退治する必要ないやろ」
「たしかに……」
数人は納得していない顔をしているが、ゾムは丸め込む気満々だった。あまりにも魔王が不憫に思えたからだった。
「すまんな魔王、迷惑かけて」
「話が通じる……！？」
魔王側が驚愕している。まさかわかってもらえるとは、と感動すら覚え、割れた窓ガラスが蘇った。
「……せや、配慮して引きこもって、ってことは、元々は町に住んどった？」
「あー……はい」
困ったように、切なそうに、魔王は笑った。
「まぁほら、そんなことよりですよ。町に帰って魔王なんて居なかったって言いふらしてくれませんか？……もう誰も殺さなくても済むように」
力の差は圧倒的で、大人五人ががりでも勝てそうにない。彼女は彼女で、自分の力を疎んでいるようだった。
「わかった。」
ゾムが言うと、魔王は安堵したように笑った。
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