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「やっぱり地面って大事よな」
空飛ぶ馬での空の旅は中々にスリリングだった。早々に諦めた面々は、しっかりと地面を踏みしめて歩く。
生きた植物がうねうねと動く森を進みながら、ゾムは木に括り付けてあるスカーフを見つけた。
「あれ、たぶん目印やんな」
「迷わへんように括り付けたんやろな。高さからして子どもやと思うけど」
白魔導士のトントンがそう続ける。
「あれ、学校で配られるやつやんな。俺らの時ももらった気がする」
「あー、そうやったかも。家にあるわ」
「えらいな、俺なくしたわ」
「そういえばそろそろ腹減った、ロボロ肉焼いてくれ」
「あいよ〜」
やはり緊張感などまるでない。
もはや散歩感覚で敵を燃やし、また凍らし。手裏剣を投げ散らかし、タライを落とし。
一行は魔王の城に辿り着いた。
城壁には蔦が絡み付き、門の横のランタンが怪しく輝く。蝙蝠が羽ばたく音がした。
「……めっちゃ魔王の城って感じすんな」
さすがの五人も唾を飲んだ。ゾムが扉を押し開くと、五人を招き入れるかのように照明が点く。
「行くぜ」
ゾムの掛け声と共に、五人は城に突入した。
城の中も、あまりトラップなどはなく……ただただ普通の屋敷のようで、それが逆に気味悪く感じる。
城の最上階、大きな扉を開け放つと、
「……またお客さん？」
小さな鈴がちりん、と鳴るような、高い声がした。
「……え、魔王って、女なん？」
「多分手下かなんかやろ」
「君、ちょっと俺ら魔王さんに用事あって」
「魔王退治ですか？」
少女は鼻で笑う。
「町の人が魔王魔王と怖がってるのは私のことですけど……そろそろ諦めてくださいませんかね」
魔王意外に口調丁寧やん、とゾムは思った。突っ込みどころはそこではない。
「私はただ、城に引きこもってるだけなのに！！」
彼女が叫ぶと、窓の外で雷が鳴った。おまけにシャンデリアが音を立てて墜落した。
「あ、すみません気持ちが高ぶってしまって……」
頭を垂れる魔王。パーティーは大混乱である。
「ほんま、ほんまに魔王なん？」
もっともな問いに、魔王は答えた。
「勝手に町の人たちがそう呼んでるだけですけど！」
彼女がどん、と机を叩くと、机は粉々に砕け散った。
「ただ魔力が少し多いだけの普通の！人間なのにぃ！」
駄々をこねる子どものようにわめけば、窓ガラスが割れた。
「あかんこいつ魔王やわ」
間違いない。パーティー一同は確信して、各々の武器を握り込んだ。
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