忍者と魔王 ページ43
【魔王退治】
魔王退治に出掛けた大人は、二度と帰ってこない。しかし子どもは、記憶力を消されて帰ってくる。
そのためこの町では、力のある子どもたちを魔王退治に送り込むのだ。
「おかしいやろ、危険なことを子どもに押し付けんの」
それが不思議でならないゾムは言った。
彼は忍者である。
「でも子どもやったら死なへんしええんとちゃうか？」
「せやけど。全員が全員帰って来るとは限らんやんか？」
「そうね」
「なら、俺らみたいなしょーもない大人が命張ったらええんとちゃうかな、って」
未来のある子どもよりも、結婚もしてない大人が行くべきだ。それがゾムの主張だった。
先程から相槌を打っていた狩人のロボロは、微妙な顔をしている。
「お前魔王退治行きたいだけちゃうか」
「せやねん。楽しそうやん」
魔王退治。男の子ならわくわくする話だ。
「パーティー作らなあかんな」
「え、マジで言ってる？」
ロボロが乗り気でないことなど関係ない。ゾムは立ち上がった。行動力には定評があり、素早さが売り。それがゾムという忍者だ。
翌日には、パーティーメンバーを捕まえてきた。
白魔道士、黒魔道士、召喚士。昔からつるんでいる、ロボロも知ってる面子である。
はじめは四人でスタートしたものの、途中からなんだかんだとロボロも加わり、五人で魔王の住み処を目指すことになる。
楽しそうだから、暇だから、金が欲しいから、英雄になりたいから。それぞれ違った動機で集まったメンバーは、一人一人がそれなりに優秀だ。
「子どもたち、たぶん魔王と会ってると思うんよな」
「なんで？」
「ちゃんとみんな記憶を消されてんねんで？魔王の仕業ちゃうかなって思うやろ」
「子どもは殺さへんってあれだね、なかなか変わった優しい魔王さんだね」
「優しい魔王ってなんやねん」
「でも確かによっぽど心あるわ」
「なんでこっち見んの」
「まぁ僕たち大人なんで関係なく殺されるんですけどね！」
和気あいあいとモンスターを倒し、魔王の城を目指し進んでいく。
緊張感などまるでなかった。強者の余裕？いや、想像以上に魔物が湧かないためだった。
「というかそもそもやで？森の中を自力で歩いて回るってのがナンセンス」
召喚士の鬱先生はそういうと、なにやら召喚の呪文を唱えだした。
「召喚！」
見た目はただの馬、しかし飛べる馬である。
「魔王の城までひとっ飛び」
「やるやん」
丁寧に人数分の馬を用意した鬱先生。皆は馬に乗り、大空へと飛び立った。
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