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俺は犬である。名前はゾム。
…なんていってみたが、別に犬ではない。
よく勘違いされるが、俺は人間から生まれたので、種族的には人間である。
俺はどこかの研究施設で生まれたらしい。
何をしたいのかは脱走する最後の日までよく分からなかったが、犬と人間の混合種を作っているらしい。
最終目標は、犬と人間どちらにも変化自在の動物を作ること。
そう、勘のいい皆様ならお分かりだろうが、俺はこの最終目標をなんと達成していたのだ。
でも俺はほかのやつよりは頭がさえていたので、このことがバレたら人間にいいように使われてしまうと察したのだ。
だからその研究施設から逃げ出したのだ。
念密に計画を練って、抜け出すところまではうまくいった。
しかしご愛肉様、人間姿の時に耳や尻尾を消すことはできなかったので、研究施設を抜け出してからは何かと不便な犬の姿で歩いていたのだが、これまた不運に拾ってくれるような人間にも会えなければ食べ物もなかった。
そうして野垂れ死にそうになっていた俺を助けてくれたのがAだった。
その時助けてくれた手を、俺は天使だと思ったのを今でもよく覚えている。
実際可愛いし優しいし、無防備に寝てしまった時なんて…いや、これ以上はやめておこう。
『ゾム、何か欲しいものある？』
あぁ、そうこれ。
彼女がつけてくれたこの名前の響きもとても好きだ。
≪No.3C、こっちへ来い。≫
あの忌々しい意味のない名前ではなく、彼女がくれたあたたかな名前。
俺の一番特別なもの。
そういえば、彼女はたくさんのことを俺にくれた。
知識も、技術も、＿＿愛情も。
でも、まだ君が何かくれるというのなら。
「俺が、ずっとここに入れるように……
君が、俺をこの場所に縛り付ける、新しい______」
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