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『え？な、なんで？昨日は犬だったのに…』
「…おれにもよくわからん。
けど、この姿なら、Aをベットまで運べたから。」
俺はこの姿気に入っとるで、なんて言って私の唇をぺろ、と舐めた。
…ん？舐めた？
『ちょ、ちょ！！な、なに？？！』
驚いてゾムを引き離すと、引っぺがされたゾムは見るからにしゅん、と耳と尻尾を垂れさげた。
「ごめん、嫌やった…？」
『嫌というか、その…！』
目をウルウルとさせてこちらを見るので、うっ、と思わず声が出た。
なんだその目は、なんか私が悪いみたいになるだろ。
『こ、こういうのは、好きな人同士じゃないとしちゃいけないの！』
「？…俺は、Aの事好きやで？」
『いや、そうじゃなくて…ってちょ、え？』
どう説明をしようかと唸っていると、急に体がベットに倒される。
え？とまとまらない思考のまま覆いかぶさってきた男を見つめていると、ふは、と笑った彼が今度はしっかりと唇を触れ合わせてきた。
「…将来子供をつくるような相手と、ってことやろ？俺にもわかってるで。
犬の愛はしつこいからな、住処に引き入れたんやから、ちゃんと責任取ってな？」
そういって笑うゾムは完全に狂犬の顔をしていた。
＿＿＿と、なんか中々長くなってしまったし余計なことも思い出してしまったが、彼との出会いはこんな感じで始まり、責任を取るというよりかは住まわせているという表現が近い。
しかし犬とは器用なものなのだろうか。
暇だと唸っていた為に教えた料理も機械系統もすぐにマスターしてしまった。
趣味でやっていたゲームはもうゾムに勝てないことが多くなってしまったし＿これに関しては多分ゾムが日中やりこんだせいもあると思うが＿、料理もぐんぐん腕を上げている。家政夫かな？
あと一つ不思議だったのは、字は問題なく読めるということだ。
どこから私の名前を知ったのか聞いてみたところ、免許証を見て知ったといっていたし、漫画とかでいうご都合展開とかそういうものなのだろうか。
「A、今日はハンバーグ作ってみたんよ！」
『すごい！ゾムはなんでもできちゃうねぇ。』
ほめてほめてと尻尾と目が雄弁に語ってくるので、頭を撫でながらそう言ってやると、嬉しそうに目を閉じた。
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