↓ ページ19
鳥の囀る声が聴こえる。朝か。
なんもやる事ないしまだ寝てよ。体力も温存したいしな。
そう思っているとカーテンが開け放たれる。眩しっ！
『おはようございますゾムさん！気持ちのいい朝ですよ！』
「…おはよう、おやすみ。」
ほんまこいつ食ったろかな？まだガリガリやけどそれでもいい気がしてきた。
布団を被り直しもう一度寝る体勢に入る。捲りあげたら食べる。そう決めた。
『ゾムさん朝は苦手ですか…？飲み物でももって来ます？』
「……水。」
『かしこまりました！』
布団を捲らなかったことに対しては褒めよう。飲み物を持ってくるのもまぁ、及第点。
はー、起きるか。仕方なく布団から出てベット際に座った。眠。
『お待たせしました〜！起きてらっしゃったんですね！』
「ん。ありがとなA。」
『っ！！はいっ！』
名前呼んだだけで顔赤くするとかチョロいな。そんなんだから悪い奴に食われるんやで。
「あとさ、足治るまでここおってええから。」
『えっ？』
「足、そのままじゃ街まで抜けられんやろ？だから家にいてええよって話。」
『でも…』
「俺がええって言ってるんや。なんか不満か？」
『いえ、ではお願いします！』
バッ！と効果音が付くくらいに勢いよくお辞儀したAは足の怪我を忘れていたようで痛さに悶えていた。おもろいなぁ、見てて飽きんわ。
『うぅ…これから宜しくお願いします…』
「ん。宜しくな。」
俺がお前を食べる時まで。
・ ・ ・
それから6日が経った。相変わらずあいつは危なっかしい。けれど少しずつ打ち解けてきているし経過は順調。そこで俺は気になっていた事をぶつけてみた。
「なぁA、あの日なんで森にいたん？」
『神隠し、されたかったんですかね。知ってます？街ではこの森に入ると神隠しに逢うって言われてるんですよ。』
勿論知っている。まぁその神隠しというのは俺が捕まえて食ってるだけの話なんやけど。
『親もいない、誰にも必要とされない私が生きてる意味も無いと思いまして。それで森に。だからゾムさんに出会えてラッキーでした！ここでの生活は楽しいですから。』
これから食べられるとは毛ほども思っていないAは出会った時と同じように屈託も無く笑った。
それを見て思ってもうたんや。こいつを食いたないって。
「そか。んじゃ俺に神隠しされた事にすればええんちゃう？」
『いいんですか…？』
「お前がそれを望むならな。」
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 76人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「wrwrd」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
