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『綺麗な目…！』
「はぁ？」
顔を隠した指の隙間からキラキラした瞳が覗く。俺苦手やねん、そういうの。
『あの！お名前はなんて言うんですか？私Aっていいます！』
「…ゾム」
『ゾムさんですね！素敵な名前です！』
屈託のない笑顔から見るに本心なのだろう。だが獲物に好かれる趣味はない。なんなら腹たってきたわ。落としたろかなこいつ。
一瞬だけ力を抜くとヒャッと気の抜けた声がする。こっちの方がええなぁやっぱ。
『お、落ちるかと思ったじゃないですか！びっくりさせないでください！』
「すまんすまん！あまりにも顔凝視されるからむず痒くってな。」
『それは…！すみません…。』
「まぁええよ。んじゃま、治療して飯にしよか。」
『はい…』
・ ・ ・
『あの…これはちょっと多すぎでは…？』
「んー？そんな事ないで！いっぱい食べてな！」
目の前に広がるのは5人前程の料理。俺にしては少なめに用意したつもりなんやけどな？あー、どんな顔で食ってくれるんやろ。楽しみやわ。
『も、もう無理です…お腹いっぱいですぅ…』
「まだいけるやろぉ！ほら、これもきっと美味いで？」
案の定1人前すら食べきらなかった女はギブアップ。いやこれからが楽しいんやけどな！有無を言わさず食べ物を口に突っ込むと苦しそうな顔。いいで、その表情。もっと見せてや。俺が食べた時もそんな顔してくれるんやろ？ そう思うと口角が下がらなかった。
『ご馳走様でしたぁ！も、もう食べられません…』
「んー、まぁええか。お粗末さまでした。」
『お片付けしたら家に帰りますね…。ありがとうございました…。』
「えっ、帰るん？親が待ってるとか？」
『いえ、両親はもう…ですがこれ以上ご迷惑になるのは心苦しいですし…』
「ここに住めばええやん。まぁとりあえず今日は泊まっていき？外も暗いし危ないで。」
『そうですか？じゃあ今日だけ…』
ひょこひょこと皿を洗いに行く危なっかしい女を横目に今後の予定を考えた。
とりあえず明日になったら足が治るまでおったらええよーって言って帰さないようにしよう。押しに弱いあの女ならきっと居てくれるだろう。くっそチョロいしな。
そして食べ時。空腹度から言って俺の方がそんなにもたん、10日かそこらが限界か。10日やな。それまでにあいつを太らして食べよう。
楽しくなってきたやんけ！
テンションの上がった俺は『ゾムさーん！』と呼ばれて思わず明るく返事を返してしまった。気をつけてかな。
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