捕食者と獲物 ページ17
【ミイラ取りの運命】
今日、新しい獲物がかかった。久々の食料や、どう料理しようか。最近は街でここら辺を通ると神隠しに逢うなんて噂が流れ始めとるらしいから人が通らんかってんな。そろそろ拠点を移動するべきか…？
まぁいい。罠にかかった事を知らせるベルを止めて獲物の元へと向かう。自分でしかけた数々の罠を避けて通るのは骨が折れるが、空腹には耐えられん。ニヤつく頬を抑えて歩みを進めた。
ここか…？動物だったら嫌やなぁ。
期待半分、不安半分で落とし穴を覗き込む。そこに居たのは若い女だった。少し涙を滲ませて左足を抑えている。どうやら足を折ったようだ。此方としては好都合やな。
隅々まで観察しているとパチリと目が合った。やべ、
『あ、あの！！すみません！ここから出して貰えませんか？足が多分折れちゃってて上がれないんです！』
「んあ？あー、ちょっと待ってな。」
どうやら女は俺が捕食者側だとは気づいていないらしい。しかもガリガリやったなぁ…あれじゃ食うとこ無いやんけ。どーすっかなぁ！
よし、決めたわ。助けて、食わせて、俺が食べる。
信頼してた相手に食べられるなんてめちゃくちゃいい顔しそうやん！天才やな…。
そうと決まればロープや。小屋にあったかな。
「ほい、これに捕まり。」
『ありがとうございます…！』
引き上げた女はボロボロの服を着ていて今ついたものでないと分かる傷が付いていた。訳ありか？
『すみません…森を彷徨ってたらうっかり落ちてしまいまして。直ぐに帰ります！ほんとにすみませんでした！！』
「あ、なぁ！」
足が折れていることを忘れてか踵を返そうとする女の手を取って呼び止める。いや、なんで今頬染めんねんそんなタイミングちゃうやろ。
『へぁっ!?な、なんでしょうか！！』
「足、折れとるんやろ？そんなんで帰れるんか？」
『あ…』
明らかに今気づきました！って顔。あ、こいつアホや。
「軽い治療ならしたるから家に寄ってき。なんなら飯も作ったるから。」
『いや、そんなの申し訳ないです！元はと言えば私が悪いんですし！』
「いーっていーって。」
掴んでいた腕をこちら側に引き寄せて抱きとめる。そのまま膝に手を差し込んで持ち上げた。顔真っ赤やんけ！面白。
「足、痛ない？」
『…はい。大丈夫です…。』
あー、顔隠されてもうた。…いや何を残念がってんねん、こいつ後で食べんねんぞ？
過ぎった要らん考えを捨てるために頭を振る。するとフードが落ちてしまった。両手塞がってて直せへんのやけど。
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