死神夢主と元彼ut ページ9
【いつまでもあなたを】
「ごめんね鬱君…ごめん、」
目の前で涙を流す彼にただ謝罪の言葉を述べ続けて早１週間が過ぎた。
でも何度謝っても彼が私に返事をすることはない。理由はわかっていた、私は、彼の目に見えていないから。
二人でデートしよう、そう言って出かけた日曜日。私は横断歩道で突っ込んできた乗用車から鬱君を庇って死んだ。
そして皮肉なことに、その日彼は私に結婚を申し込む予定だったらしい。これは私が死んでから知ったことだった。
彼に想いを伝えれていなかったり、いろいろな未練によって私は現世に留まることになったらしかった。
＿＿＿最悪の形で。
いったい私がどんな悪行をしたのか、私は「死神」として＿＿＿「鬱君の魂を奪うこと」を使命とした死神として、もう一度生を与えられた。
死神は、実体がない。私がこのことに気づいてから真っ先に鬱君の家に向かったのはもちろんだが、彼は私が死んでからずっと家に引きこもって泣いていた。
「A…ごめんな、俺のっ、せいで」
ひとりで私の名前を呟きながら嗚咽を漏らし続ける彼を見ていることができなくて、私も聞こえていないと分かっていながら彼に謝る。私は…あなたを殺さなければならない、大事な日に死んでごめんね＿＿＿。
これが毎日の日課となっていた。
＿＿
今日も彼の家に入る。カーテンを開けて虚空を見つめていた彼は、深い溜め息をつくと小さなか細い声でつぶやいた。
「A＿＿＿ここに、今おるん？」
「え、？」
ひゅっと喉が鳴る、正確には音はしていないのだが心臓がバクバクと大きくなっている…気がする。
「見え、てるの？」
彼は返事をしない、やっぱりただの独り言なのだろうか。
と、その時彼のスマホが鳴った。だるそうにスマホを手に取り画面を見た彼はまた溜め息をつく。
画面をのぞき込めばそこには「トントン」という文字が。
「…もしもし」
『もしもし、俺やけど…珍しいな、お前がこの時間にちゃんと起きとるなんて』
「まあ、…んでなんか用なん？なんもないなら切るで」
『…お前大丈夫なんか、Aさんのこと…ずっと家おるって聞いたけど』
「…」
ﾌﾟﾂｯ
鬱君によって電話が切られる。彼の表情は悲壮に満ち溢れていた。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 126人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「wrwrd」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
