色々なtn氏企画【w.r.w.r.d.!】 (ページ4)

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目を覚ますと、私は街の病院にいた。
トントンさんは随所に包帯を巻かれた姿で、あの日のことを説明してくれた。

人狼は二匹いた。
鬱先生と、ゾムさんだ。
森に出たところをまずコネシマさんが襲われ、それに気づいたトントンさんが応戦し辛くも勝利したという。
嫌な予感がして屋敷に戻ると、みんなはもう殺されており、鬱先生の「気持ち悪い」声が聞こえてきたため奇襲したとのことだった。
生き残ったのは、私とトントンさんのみ。

「私、役立たずでした」

見下ろす手の小さいこと。武器も持てず、知恵も絞れず、無様に悲鳴を上げることしかできなかった。
大きな手がそっと重ねられる。

「手を汚すのは僕だけでええです。Aさんの手は、なんというか、僕なんかよりずっと大事な、人の生活を支える手でしょう」
「……ありがとう」

耳を赤くしながらも言葉を紡ぐ彼が、涙でぼやけた。
嗚咽が漏れる。おそるおそる、手を握られた。

「祖父の仇を、みんなの仇を討ってくれて、ありがとう」

握られた手は、ただひたすらに暖かかった。

私たちは飛び地に戻らなかった。
私はこちらのパン屋を手伝い、トントンさんは時折森に潜って狩人の仕事を続けている。
そしてしばらく経った、ある晴れた午後。

「中々来れなくてすみません」

街の隅にある教会。
見知った名前が連なる墓石を見据える。

「ずっと悔しかった。私のせいで人狼を誘き寄せてしまった。皆さんを殺してしまった。それなのに生き残ってしまって」

枯れ葉が風に揺れる。もう秋が近い。
カーディガンの裾を掴む。

「でも、生き延びたからには、最期まで足掻いてみようと思います。もしまた人狼が来ても、今度こそ暖炉で焼くくらいの意気込みで」
「激しいな、Aさん」

隣でトントンさんが笑った。
お揃いの指輪が薬指で光っている。

「もう帰ろう」
「せっかく来れたのに」
「また来れますやん。何度でも」

自然と手を繋いだ。すっぽり覆われた手がふかふかしている。

「帰ったらシチューにしよか」
「昨日もトントンさんが作ってくれたじゃないですか」
「ええって」

クスクスと、笑い声が青空に消える。

「じゃあ私はマフラーを編みます」
「うん、頼むわ」
「帰りに毛糸買って行ってもいいですか？」
「ええよ」
「毛布も新しくしたいですね」
「それは今度やな」

ぬるま湯に浸かるような幸福。
今度こそは手放すまいと、密かに誓った。