色々なtn氏企画【w.r.w.r.d.!】 (ページ17)

今日:11 hit、昨日:8 hit、合計:47,622 hit

↓ ページ17

そのノートには日付付きで丁寧にクローバーが貼り付けられていた。一番はじめの日付は七年前の四月。
Aが小学四年生、俺が五年生の頃だ。

幸せを百枚目集めたら、奇跡くらい起こりそう、か。

これは七年も前からAが、何らかの願いを叶えたいと思って集めていたものなのだろう。

そんなもんをなんで今、俺に。

小学生の頃からずっと好きだったと言った。情けないとこばっか見とるのに？

元々恋愛に興味もなかった。告白されたことも過去にあった記憶はあるが、適当な理由をつけて断ってきた。

幼馴染みが事故に遭い、目を覚まさなくなってからは余計に、自分だけ幸せになるなんて許されへん、そう思っていた。

Aには幸せになってほしい。
でも、俺は自分を許せへんかってん。

Aは特別な後輩やった。それがどう特別だとか、考えんようにしとったのにな。

気付いてしまった。気付かされてしまった。

「先輩！すごいですよ、すぐに見つかったんです！きっと、……」

気付かされてしまったんやから、しゃーないな。
心の中で呟いて、俺はAを引っ張った。

＊

いつの間にか、私は先輩の腕の中にいた。

「とっ……トントン先輩！？」

やっぱり私の告白程度では気を紛らわすことすらできなかったのだろうか。

「……なんか、願い事があったんやろ。これはお前の幸せを願うために使いや」

ノートのことだろう。それは魔法のアイテムでもなんでもない、ただのノートだ。

「私の幸せは、トントン先輩が幸せでいてくれることです」

その言葉に嘘はなかった。トントン先輩が幸せじゃないのなら、私だって幸せじゃない。

「参ったな」

トントン先輩は私から離れ、少し微笑む。

「僕の願いも、Aが幸せで居ってくれることなんやけど」

先輩は諦めたように言う。
どういうことですか、先輩。そんな態度で、そういうこと言ってると。

「勘違いしちゃいますよ」
「勘違いとちゃうで」

なんで、先輩はあの人のことが好きだったはずだ。昔告白されていたときに好きな人が居ると断っていた。

「……罪悪感よりお前の幸せを取りたい。これは言い訳や」

先輩は真っ直ぐ私を見つめる。今の間に先輩の中でどんな変化があったのだろう。私にはわからないけど。

「俺も好きやったみたいやわ」

あの願掛けは、効果があったのかもしれない。

とりあえず、先輩。
私が勝手に恋敵だと勘違いしていた彼女のお見舞いに、私もついていっていいですか。