色々なtn氏企画【w.r.w.r.d.!】 (ページ13)

今日:8 hit、昨日:8 hit、合計:47,619 hit

先輩と後輩ページ13

【百枚目の願い事】

百という数字を私は、とても大きくて遠いと感じていたから。だから、終わりのない目標のように思っていた。

道端で四つ葉のクローバーを見つけた。しあわせのしるしのクローバー。

これが百枚集まったら、私の叶うはずもない恋だって叶うかもしれない……なんて。

その日から私は四つ葉のクローバーを見つけては、自分のノートに挟むようになった。

大きいのから小さいのまで形は様々。でも虫食いは集めないで川に流してしまうことにしよう、そんなルールをつけた。

あれから何回の春が過ぎたんだろう。私の赤色のノートには、まだ百枚目のクローバーは挟まれていなかった。

告白なんてできないまま、先輩は小学校、中学校と卒業し、一年後同じ高校に入り。また、もう少しで先輩は卒業してしまう。

ノートには九十九枚のクローバー。

百枚目を挟むのが怖かった。今までの圧縮された想いがあっけなく壊れてしまいそうで。

こんな願掛け、なんの意味もないとわかっている。

私の好きな先輩には、ずっと想っている人がいた。
私がずっと先輩を想っているように、先輩は別の人が好きなのだ。

拗らせた長年の恋の重みがわかる私だからこそ、叶わない恋だとわかってしまう。

「今日は用事あるしそろそろ帰るな」

トントン先輩が腰をあげた。
先輩を追いかけて入った生徒会。新生徒会になってしばらく経ったが、今でもたまにトントン先輩は顔を出してくれる。

「お見舞いですか」
「せや」

トントン先輩の想い人は、先輩と同い年の入院中の人だ。

「ほんなら、お疲れ。Aも早めに帰るんやで」

私が頷くと、ええ子や、と言い残して先輩は去っていく。

二人きりの生徒会室は束の間の幸せだ。

その優しい声も、笑顔も。それから、……普段見せないような、弱々しい顔も。

大好きだから、辛くて仕方がない。

トントン先輩の好きな人になりたい。

あの赤いノートに最後の一枚を挟む勇気もないくせに、諦めることも出来ずにいる。

「すきです、先輩」

私の呟きは、一人きりの生徒会室ではやたらと大きく聞こえた。その声は震えていて、あまりにも弱々しいのに。