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踊るようにくるりと回って避けて、お辞儀をしたところに、またカービンを撃ち込むがしゃがんで避けてきた。可愛い。弾を取り出しハンドガンに装填している間に、吹き抜けになった空に飛び立つ。じっとしていられないすばしっこい少女に、好き勝手されるのは堪らない。
「吸血鬼の方が売れますよ」
「私の遺灰じゃ花は咲かないわ」
「勝手にジジイに………せんでください!」
上に飛んだのをいいことに、RPGでを放つ。避けた先、RPGの弾を目で追う様子に、更に撃ち込むが、魔弾の蝙蝠が犠牲になっただけだ。彼女の背の向こう側で、時計塔の角が削れ轟音が上がる。RPGは着弾したらしい。予定と違ったが、まぁ、いいか。ポケットに入れた起爆装置を握り込む。
眼を見開くAを他所に、時計塔の針と塔の根元が崩れ落ち始めた。落ちてきた短針でAが、降りかかる屋根や瓦礫に抵抗を始める楽し気なその背に向かって、照準を合わせ立て続けに撃ち込む。
「ショッピ、危ない!」
デカい瓦礫に耐えきれない床が俺を飲み込んで崩れ始める。サンドウィッチにされる光景が脳裏をよぎって、反射的に目を瞑った。
「………ショッピ、タイミング考えて発破しないとダメみたいね」
「っすねーやってまった、ありがとうございます」
動けないままの俺の真上で踏ん張っている吸血鬼。右頬に一直線の焼けた跡をつけてもそれを気にしない様子で、短針ごと瓦礫を庭園の方に放り投げた。両手を叩いて払い、俺の腕を引き上げる。それに合わせて立ち上がると、Aは後ろを目を満月にして見つめていた。
「あ」
Aがサッと俺のジャケットの中に、身を縮こまらせて収まり入る。その謎の行動に続くように、ザーッと雨が降り始めた。後ろを見ると、瓦礫に潰された噴水が、水の発射口が拉げたせいで暴走している。
余り遊べてはいないが、損壊度が高すぎる。今日はもう終わりだろう。瓦礫に埋もれた相方から目を逸らして、現実を頭の外に追いやった。
「噴水への攻撃も禁止せんとあかんのちゃいます?」
「うん、やっぱり、遊ぶ時は屋上で遊ぼ?一番最初の時みたいに」
青ざめた顔で流水に怯える吸血鬼が、それでもへらっと気の抜けた笑顔を向けてくる。あぁこれだ。こいつの能力など知ったことではないが、この笑顔で俺に新しい名前を付けて、呼んだからあの日確かに運命が変わった。何度も再生しろと、時間よ止まってしまえと考える。
ジャケットの中頭抱えて蹲る主の頬を、親指の腹で拭ってやった。
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瀉天 - 先輩後輩ってオレンジ? (2020年6月21日 13時) (レス) id: 55ffdc0025 (このIDを非表示/違反報告)
ゴミ箱 - めちゃめちゃ良かったです!沢山の作者さん、主催者さん、ありがとうございました! (2020年5月18日 8時) (レス) id: 94cbebf757 (このIDを非表示/違反報告)
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