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「――ありがとうございました。次は風紀委員より学園での過ごし方です」
のんびりとりた時間が流れる中、司会の生徒会役員の声で小さな歓声が上がった。それは今、檀上の上に立った人に向けられたものだ。
「風紀代表、2年A組泉奏です。風紀から学園での決まり事を説明させて頂きます。
まず、新入生の皆様、九瓏ノ主学園にご入学おめでとうございます。貴方たちをこの場で確認できたことを喜ばしく思います。つきましては学園での――」
奏は檀上でも戸惑うことは無く、決められた台詞をスラスラと口から滑らせる。それは感嘆の意を示すほどだった。
始業式は何のトラブルも無く進み、生徒は教室に戻るように指示された。Aは行きと同じくしてアキラと行動していると、前方に見知った顔を発見する。
それは数人の生徒と仲良く談笑しているようだった。話しかけるのもなんなので、そのまま二年校舎に行こうとしたのだが、前方にいた人物が後ろを振り向いたせいで見つかってしまう。友人と思われる人達と二言程度喋ったかと思うと、笑顔でこちらに向かってきた。
「A!」
「よお、ウィト」
「……なに、知り合い?」
ウィトを知らないアキラだけ小首を傾げながら質問してきた。
「ああ、幼馴染」
「ふーん」
「あ、朴ウィトです! 宜しくお願いします!」
「おお、神生アキラだ。宜しく」
「アキラ先輩ですね!」
Aがウィトに、何か用があったのかと尋ねると、何もありませんけど? と、そう返された。用が無いのなら、なんで友人にことわってまでこちらに来たのかという疑問が残る。
「友達は良かったのか?」
「多分? まあ、問題ありません!
それにしても、Aってこの学校では有名なんですね」
「は? 有名ってなんだよ」
「女子達が噂してましたよ」
中学からの持ち上がりが多いこの学園では、Aを知っていたとしても可笑しいことは無いのだが、噂されるようなことをしたかと眉を顰める。
「あ、悪いことじゃ無かったんですけど……」
「じゃあ、なんだよ」
「まあ、俺は大体わかったぜ」
「アキラ?」
アキラに聞くも、やんわりと誤魔化される。特に大したことではない、と。
「えーと、朴?」
「あ、ウィトで良いですよ」
「じゃあウィト、Aは変なとこで鈍いからそういうこと言ってもわかんねーよ」
「本当ですか? 知りませんでした」
ウィトは新たな発見です、と笑ってからそろそろ行きますと一年校舎の方へ駆けて行った。
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