9：忘れられない過去の話 ページ10
小学校4年生の終わり頃、たまたま隣の席になった男の子。
詳しくは覚えてないけど、一緒にどこかに行こうと誘われた。
その日はシッマと約束があって、
「シッマと約束があるから」
と言ったら、
「シッマとAさんはいつでも遊んでるやん。シッマとの約束は今度じゃあかんの？」
と言われて。
どっちが正しいのかわからなくなった。
男の子が私の変わりにシッマにそれを話したら、
「A、お前はどうしたいんや？」
と、シッマに問われた。
先に約束していたのはシッマで。
でも男の子の言うように、シッマは隣の家だし、いつでも遊べる。
シッマと遊ぶのはいつも楽しい。
でも、はじめて誘ってくれたのも嬉しいし。
二人からじっと見られて、私は決断できなかった。
「ど、どっちでもいい……」
私が言えたのはそれだけで、
シッマは呆れた顔をして私を見ていた。
「ホンマつまらん奴やな」
吐き捨てるように言われて、私はなにも返せないまま。
「自分の意思がないんか」
いつもシッマについていくと、面白いものをたくさん教えてくれて。
シッマは眩しくて、キラキラしていて、私の憧れだった。
ずっと、多分、意思なんてなかった。
ただただ、シッマの意見に賛成していた。
そんな私のことを、シッマはずっと、つまらないやつだと思ってた？
ずっと、迷惑だった？
「もうええ」
背を向けて去っていくシッマを追いかけることすらできなくて、ただただその場で立ち尽くしていたのを覚えている。
そのあと男の子と遊んだところで、全然楽しくなくて、シッマのことばっかり考えた。
「A、お父さんとお母さん、離婚するわ」
母からそう告げられたのは、凍えるような冬。
「お母さんと一緒に関東に引っ越すか、大阪のおばあちゃんの家からこの学校まで通うか。どっちがいい？」
「……どっちでもいい。お母さんは、どうした方がいいと思う？」
「Aがついてきてくれた方が、お母さん嬉しい」
「なら、そうする」
あっさりと転校は決まって、シッマとは喧嘩したまま別れた。
母の再婚相手の転勤で、まさかこっちに…しかも、元の家と二駅しか違わないような場所に来ることになるとは思っても見なかった。
昔みたいに、シッマと仲良くなれる？
私が私のままである以上、それは無理だ。
「意思がない…」
ざわざわした廊下で、私の呟きは飲まれてしまう。
人混みに紛れて、空気のように、居ても居なくても同じだ。
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茜(プロフ) - 神作でした…終わり方がとっても好きです…なんでこんなにhit数少ないのか疑問です、もっと多くの人に読んで欲しい！と思いました (2019年11月14日 23時) (
レス) id: d2182e9bad (このIDを非表示/違反報告)
zut（ジット）(プロフ) - 自分は意思があるけど言えないわけじゃなくて、意思が弱いというか何も考えていないというか…私もknさんみたいな人に振り回されたいなぁって思わされるお話でした！楽しく読まさせてもらいました。ありがとう！！違う作品の更新も頑張って！！ (2019年8月1日 12時) (レス) id: a768d99ede (このIDを非表示/違反報告)
zut（ジット）(プロフ) - 完結！！お疲れさまでした！最後の方では、自分の意思をしっかりと伝える所にすごい感動しました。これからもknさんに楽しく振り回されていくんだろうなぁ。 (2019年8月1日 12時) (レス) id: a768d99ede (このIDを非表示/違反報告)
ものくろ*(プロフ) - 完結おめでとうございます！この作品は特にせなちゃんに共感出来る所が多く、コネシマさんがカッコよかったので更新されたら毎度ガッツポーズかましてたような記憶があります笑 残り二人の小説も終わりまで拝読させてもらいます！素敵な作品を有り難うございました！ (2019年7月31日 22時) (レス) id: addff992e8 (このIDを非表示/違反報告)
千白は山に住む(プロフ) - 桜藍さん» コメントありがとうございます！3つ同時は結構無謀だったかなと思っているところです笑 本来の性格ってなかなか変われないですよね……(*´-`) ありがとうございます、頑張ります！ (2019年7月6日 18時) (レス) id: f80b5e4d2a (このIDを非表示/違反報告)
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