【派生作品】怪異達の日常 (ページ6)

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「こんばんは。先生が彼の担当医ですか？」

　声をかけるも反応はない。医者は音もなく牛崎氏のベッドへゆっくりと、だが確実に近寄ってくる。だんだんと死臭は強くなる。

「返事くらいしろ」

　返事のなかった事に気を悪くしない者はそういないだろう。それは怪異も同じ事で、不機嫌になった吸血鬼は鉄バットで医者の頭にあたる部位、中身がよく見える大腸と青ざめた女性の腕でできた頭部を叩き割る。直撃した箇所は、はじめからそこには何もなかったかのように消失した。

　しかし、医者は止まらない。痛覚がないかのようだった。ならばと吸血鬼は医者の両足のような何かを文字通り蹴り飛ばす。煙草か何かで黒く変色し歪に変形した肺と口と血のこびりつく爪と髪の毛でできた脆い足を失い、バランスを崩した医者は吸血鬼の方へ倒れ込み、ちょうど抱き合うような形になる。だが吸血鬼に攻撃を加えない。吸血鬼の背後にいる牛崎氏の方へと腕を延ばしている。にちにちと、肉の筋が切れる音が吸血鬼の耳元で鳴った。吸血鬼は延ばされている腕を掴み、引きちぎる。先程より軽い力、胴体に穴を開けない程度の力で蹴ってどかした。

「よほどあの人間を殺したいみたいだが、残念だな」

　分離した医者の両足と腕はまだ動いて、それぞれが牛崎氏の方へ蠢いている。それらを集めて、吸血鬼はおもむろに鉄バットを構えた。

「私はスイパラに行きたい気分なんだ」

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