ページ ページ11
「人間」
「何だよ」
「こいつを飼いたい」
夜の散歩から帰ってきたテスは段ボール箱を抱えていた。中にはぼろぼろのタオルケットと、黒い毛並みの子犬が入っている。小型犬と思しきその子犬はかなり弱っている様子で、かすかに呼吸をしているだけだ。
「元気になるまで世話するとかならまだしも、お前に生き物が飼えるのかよ」
「大事にするから……最悪ボロ屋のやつらに頼むし……」
「そんなこったろうと思った」
犬飼は子犬を覗き込む。衰弱している。痩せ細っており、素人目にも何日も食べてないのが分かるほどである。
テスがこの子犬を連れてきたのは、恐らく気まぐれなのだろう。テスにとって動物は自分の食物でしかない。その証拠に、テスの顔には、この子犬に対する憐憫の情はまったくうかがえなかった。
「……あの人間に頼んでみるか」
テスが呟く。あの人間というのは、ボロ屋の仲介である藁粥景だろうか。
「ボロ屋の皆で飼うつもりなのか?」
「できなかったら食う」
「だめだろ……というか飼う飼わない以前に獣医に連れていってやれよ。金なら俺が出すからさ、な?」
「それもそうだな。健康にして太らせないと」
「食べるな」
1人がお気に入り
「オリジナル」関連の作品
この作品を含むプレイリスト ( リスト作成 )
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ