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「人間」

「何だよ」

「こいつを飼いたい」

 夜の散歩から帰ってきたテスは段ボール箱を抱えていた。中にはぼろぼろのタオルケットと、黒い毛並みの子犬が入っている。小型犬と思しきその子犬はかなり弱っている様子で、かすかに呼吸をしているだけだ。

「元気になるまで世話するとかならまだしも、お前に生き物が飼えるのかよ」

「大事にするから……最悪ボロ屋のやつらに頼むし……」

「そんなこったろうと思った」

 犬飼は子犬を覗き込む。衰弱している。痩せ細っており、素人目にも何日も食べてないのが分かるほどである。

 テスがこの子犬を連れてきたのは、恐らく気まぐれなのだろう。テスにとって動物は自分の食物でしかない。その証拠に、テスの顔には、この子犬に対する憐憫の情はまったくうかがえなかった。

「……あの人間に頼んでみるか」

 テスが呟く。あの人間というのは、ボロ屋の仲介である藁粥景だろうか。

「ボロ屋の皆で飼うつもりなのか?」

「できなかったら食う」

「だめだろ……というか飼う飼わない以前に獣医に連れていってやれよ。金なら俺が出すからさ、な?」

「それもそうだな。健康にして太らせないと」

「食べるな」

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作者名:ミクミキ | 作者ホームページ:http  
作成日時:2021年7月31日 21時

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