一方通行【不死川実弥】

31. ページ32

．





暖かい。




広くて大きい背中と、大好きな匂い。






『……ん、？』


「起きたかァ、大馬鹿者。」




潰れてしまったようだ。
どうやらおぶられて、運んでもらっているらしい。




『…すみません。』




「…あァ。」






降ろす気配がないため、
このまま屋敷まで運んでくれるみたいだ。







こんな機会もうないかもしれない。
聞くなら、今しかなかった。





『…ねえ、不死川さん』




「なんだァ」









.









『…まだ、私のこと好きですか？』









.









.









絶対に聞こえているはずなのに、
一向に返事が返ってこない。






『…もしも〜し、聞いてますか〜〜〜〜？』

少しむかついたから耳元で言ってやった。







「っ、るせェな。……だったら、何だってんだよォ」


小さな声だったが、聞き取るには十分だった。








.








『…じゃあなんであんな事言ったんですか？』




「……テメェは伊黒が忘れられねェんだろ。」


不貞腐れた子どものような言い方をする。








ああもう本当、音柱様の言う通りだ。
けどそんな所も愛おしくてたまらない。









『……不器用ですね。』









不死川さん、これから言う事
よく聞いていてくださいね。


.

32.→←30.

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す