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悟side

レースが終わって、着順が出て、勝利騎手インタビューも終わった。
僕は、この日...初めてAの出るレースに行かなかった。
デビューする前の模擬レースでさえ顔出してたのに。

Aに...今日のレースかっこよかったよ、綺麗だったよ、最高だったよ。
どんな言葉さえ現地でかけてあげられない。

その事実に胸が痛んだ。

ピロン

近くで僕の携帯が鳴った。
募る悲しさを隠すように手にとって来た内容を見れば目を疑った。

AのじーちゃんA、今日直帰だとよ

Aは疲れて基本ホテルに泊まったり寮の空き部屋借りたりして月曜まで帰ってこないのに...

まさか、

ガチャッ

悟「硝子、もしかして倒れたのAに言っ...」

振り返って帰ってきたであろう硝子の方を見れば、ドアを開けて立っていたのはAだった。

悟「A何やってんだよ。疲れてんのに術フルで使って!!」

Aは自前の身体能力がそこそこガチ走りの競走馬と並走できるくらいで悠仁よりとんでもない。
そんなAが持つ術式は自己強化にだけ極振りしたみたいなもの。
術師としてキャリアを積んでいれば間違いなく並の1級じゃ太刀打ちできない。
無下限なきゃ、僕の喉元に刃が届いていたかもしれない。

最近は真希と頻繁に手合わせしてるから...術使えば開催地の千葉にある中山競馬場から高専までひとっ走りなんて秒...

でも、僕が声を荒げてもAは怯まなかった。

A「みんなに手を振っても、ファンサービスで拳を突き上げたって...歓声は次への期待、応援は重圧。キラキラした舞台なのに、どこを見たってモノクロに写ってしまうのはなんでだと思いますか?」

泣きそうな顔をするAだって声を荒げた。
今まで...声を荒げた事なんて...お互い無かったね...

A「悟さんが嘘ばかりつくからですよ!!疲れてないって言ってるのも嘘!寝る間も惜しんで働いて、寝る間も惜しんでレース見に来て!!今日のレースに悟さんが見に来てないのは私のせいで倒れたからなんだって考えたら。何も楽しくありませんでしたよ!!」

分かってる。
僕の度が過ぎてるのは分かってるんだよ!!

悟「でも、Aの1番はいつも"俺"じゃねぇだろ!!行かなきゃ誰かに取られるかもって思うだろ!!今日だってスタンドに手振ってファンサして、あぁ俺いなくてもするんだって嫉妬して!!」

大喧嘩→←画面



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作者名:伊織 凛 | 作成日時:2023年6月18日 15時

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