第十五話 「体育祭前日準備」 ページ1
時間は進み、体育祭の前日___10月第一週目の金曜日。
生徒会のみならず、急遽作られた実行委員や運動部までもが駆り出され、それはもう大忙しだった。
「それじゃあ、そのテントをこっちに張って…」
「放送委員はこっちに集まって!機器のテストするから」
あちこちで教師の掛け声が上がる中、私はふと朝礼台の方を見る。
「それじゃあ、さっきの部分をもう一回」
「はいっ!『お互い、今までの努力を出し切れるように…』」
ハヤトさん…もとい生徒会長は、先生と一緒に明日全校生徒の前で喋る挨拶の練習をしていた。
こうして生徒会長として働く彼の姿は、いつもとは違う空気をまとっていてかっこいい。
ぼーっと彼の姿に見惚れていると、後ろから肩を叩かれて振り返る。と、そこには。
「…あ、貴方は生徒会選挙の時の…」
「お久しぶり、月ノ美兎です」
華奢で小柄な体躯を見せながら私に自己紹介をする先輩は、生徒会選挙の時にもお世話になった月ノ美兎さんだった。
「今日は準備でたまたま会いましたが、普段は学級委員長をしています。…いやぁそれにしても、書記としての仕事、だいぶ慣れてきたようですね」
と私の姿を見て褒めてくれた。嬉しくなってデレていると、月ノ先輩は楽しそうに笑っていた。
「二年生で生徒会に入る貴方ももちろん凄いですが、何よりも彼はピカイチですね」
そう言いながら先輩が見ていたのは、ハヤトさんの方だった。
「三年生の間でも話題ですよ、凄い二年生がいるって」
「そうなんですね…確かに、ハヤトさんは凄く頑張ってます」
彼を羨望の眼差しで見つめる私の横顔を、月ノ先輩はどこか察したようにニヤついていた。
「…本当に好きなんですね、彼の事」
「はい。本当にかっこよくて、尊敬してて…えっ?あ、いやそんな意味じゃ…!」
「ふふふ、いいですねそういうの」
月ノ先輩がからかってくるのを真っ赤になった顔のまま誤魔化していると、校舎の中から長身の女子生徒が出て来てこちらに向かってきた。
「美兎ちゃーん!」
銀髪の長いポニーテールを揺らし、吹奏楽部のユニフォームである水色のシャツを着ている。
「あ、楓ちゃん!どうしたの?」
「いやどうしたんじゃなくて…!先生に呼ばれてたで」
「えっ、ちょ、マジ!?あ、ごめんなさい失礼しますね」
月ノ先輩はそう言い残して、楓と呼ばれていた友達らしき人と一緒に校内に消えて行った。
私はその後ろ姿に手を振りながら、体育祭当日を楽しみにしていた。
102人がお気に入り
この作品を見ている人にオススメ
「2j3j」関連の作品
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
こみ - 私もこの1年間高2A組だったのですごく嬉しかったです!幸せでした! (2021年4月4日 15時) (レス) id: a0adc0f2be (このIDを非表示/違反報告)
伊織(プロフ) - ばちぅ兼もてゃさん» こんにちは。コメント、そして読了ありがとうございます!続編の方は別のお話と同時進行の予定ですので、もうしばらくお待ちください。 (2020年6月20日 18時) (レス) id: 472e77b4e7 (このIDを非表示/違反報告)
ばちぅ兼もてゃ - こんにちは...ばちぅ兼もてゃです...最初から最後まで全部読んでました、執筆お疲れ様でした!続編も楽しみにしてますね、もちろん読みます (2020年6月20日 18時) (レス) id: 603073c1b4 (このIDを非表示/違反報告)
伊織(プロフ) - 蒼渇さん» 蒼渇さん、コメントありがとうございます。楽しんで頂けたようで何よりです。よければこれからもお付き合い頂ければ励みになります。 (2020年6月2日 14時) (レス) id: 472e77b4e7 (このIDを非表示/違反報告)
蒼渇(プロフ) - ひぇ…めちゃくちゃキュンって来ました…好きです!!!!!!!無理せず更新頑張って下さい! (2020年6月2日 10時) (レス) id: c685f96854 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:伊織 | 作成日時:2020年5月30日 14時