「想いの芽生え」:3 ページ14
「ハヤト、この人は?」
「同じ生徒会の人で親しい方なんですよ、今日は買い物ですか?」
女の子に私の紹介を軽くし、私の顔をじっと見つめたまま会話を振ってきた。
「あ、はい…ハヤトさんこそ、今日はどうしたんですか?」
「今日は文化祭の資材調達と、たまたま葉加瀬さんと出会ったので一緒に買い物を」
葉加瀬さんと呼ばれた隣にいる女の子は、ハヤトさんとニコニコと笑い合って和やかな雰囲気を出していた。
なんとなく、自分がここにいることが場違いな気がしてもう帰ろうかという気持ちに苛まれていた。
「お二人、本当に仲が良いんですね」
私が二人のやりとりを眺めながらそう呟くと、葉加瀬さんはハヤトさんの顔を見ながら、
「まぁ結構付き合い長いよね〜、ハヤトがこんなちっちゃい頃から…」
「ちょ、そういう話は今やめてください!」
思い出話に花を咲かせる二人の様子を眺めていると胸が痛む。
私はそっと帰ろうとしたが、それに気づいたハヤトさんに呼び止められてしまった。
「どうかされたんですか?」
「いえ…その、お二人のデートを邪魔するのも失礼かなと」
本音でそう伝えると、二人は口をぽかんを開けて、やがて葉加瀬さんはゲラゲラと腹を抱えて笑い始めた。
その反応に私は頭上にはてなマークを浮かべて、背中を丸めて笑う葉加瀬さんの横で、ハヤトさんは冷静に説明を始めた。
「幼馴染…!?」
「そんなに驚くところですか…?」
あまりにも二人の距離が近いので、恋人同士かと思ってしまっていた。
「いやー、デートかぁ、そんな風に見えちゃってた?」
目尻に溜まった涙を指で拭いながら、葉加瀬さんはひとしきり笑った後に息を整えていた。
私は心のどこかで、ふっと安心したような気持ちに埋め尽くされていた。
*
ハヤトとその親友だというAさんと会い、駅で少し話をして別れを告げた。
電車に乗り込む二人に手を振りながら、私___葉加瀬冬雪は、その後たまたま幼馴染の夜見れなに会った。今日はなんだか、よく人に会う日だ。
「ねぇ冬雪、さっきの二人って付き合ってるの?」
「いや、違うみたいだよ。お似合いだよね」
れながニマニマと楽しそうに聞いてきた。私は心から思っていた言葉を呟く。
「いや〜、ハヤトにもそういう人ができるお年頃だねぇ」
「ふふ、応援してあげないと、だね」
遠ざかっていく電車を眺めながら、女子二人の内緒話は人混みにかき消されて聞こえることはなかった。
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こみ - 私もこの1年間高2A組だったのですごく嬉しかったです!幸せでした! (2021年4月4日 15時) (レス) id: a0adc0f2be (このIDを非表示/違反報告)
伊織(プロフ) - ばちぅ兼もてゃさん» こんにちは。コメント、そして読了ありがとうございます!続編の方は別のお話と同時進行の予定ですので、もうしばらくお待ちください。 (2020年6月20日 18時) (レス) id: 472e77b4e7 (このIDを非表示/違反報告)
ばちぅ兼もてゃ - こんにちは...ばちぅ兼もてゃです...最初から最後まで全部読んでました、執筆お疲れ様でした!続編も楽しみにしてますね、もちろん読みます (2020年6月20日 18時) (レス) id: 603073c1b4 (このIDを非表示/違反報告)
伊織(プロフ) - 蒼渇さん» 蒼渇さん、コメントありがとうございます。楽しんで頂けたようで何よりです。よければこれからもお付き合い頂ければ励みになります。 (2020年6月2日 14時) (レス) id: 472e77b4e7 (このIDを非表示/違反報告)
蒼渇(プロフ) - ひぇ…めちゃくちゃキュンって来ました…好きです!!!!!!!無理せず更新頑張って下さい! (2020年6月2日 10時) (レス) id: c685f96854 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:伊織 | 作成日時:2020年5月30日 14時