69. ページ20
「────んっ」
一瞬何が起きたのか分からなくて。
突然の感触に肩が跳ねる。
キスされたのだと分かると、一気に顔に熱が集まるのを感じた。
名残惜しそうに離された唇に指先で軽く触れる。
「は、ぇ…/////」
「悪い。可愛かったからつい」
ついって…
初めてのその感触は、決して嫌ではなかったけれど。怖さはまだどこかにあって。
轟くんはまた真剣な顔になって言った。
「あと。さっき爆豪とキスしてたよな。どういうことだ」
「あれは誤解で…」
事情を説明すると、轟くんはほっとした表情を浮かべて────今度は首筋に顔を埋めた。
「…っぁ…」
ピリッと走った痛みに思わず轟くんの袖を握り込む。
「な、に、したの…？」
「Aは俺のものだって印つけといた」
「っ…！？は、ずかしいよ…/////」
「悪い」
私は轟くんの袖を握ったまま、ぽつぽつと話し出す。
「…私、快楽が、怖くて」
今までそんなもの知らなかったから。
拒んだことで、轟くんが離れていってしまったら。
それがただ、怖かったのだと。
そう伝えた。
「前にも言っただろ。お前が俺から離れても俺は離れねぇ。絶対だ」
「…うんっ…あり、がとう」
怖さはまだあるけれど、それを解すように、轟くんは優しく微笑んでくれる。
ここにいていいのだと言われている気がして、嬉しくて轟くんの胸にぽすんと顔を埋めた。
私の頭を撫でながら、思い出したように彼が言う。
「あとちゃんと食えって言っただろ。心配する」
こく、と頷くと、轟くんは私を引き剥がして向き合った。
「もう一回、していいか」
「っ！/////」
肩をつかまれて真剣な瞳に捕らわれて。
あたふたしていた感情を何とか静めて、ぎゅっと目を閉じる。
────でも、時間が経っても何も起きなくて。
恐る恐る目を開いた瞬間、唇が目の前にあった。
「────すげぇ可愛い」
「っ！？…ん、んっ」
轟くんは恐怖を溶かしていくように優しく、何度も角度を変えて口付ける。
私は恥ずかしいのとドキドキしているので訳が分からなくて、轟くんの裾を強く掴んでいた。
────私はもう、この人なしでは生きられなくなっている。
それほど大切な存在になっていることに、自分でも少し驚いた。
────大好きだよ、轟くん。
夕焼けに染まる教室で、袖を握る手を少し強めた。
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作成日時：2017年12月12日 21時
